2002年(平成14年)9月20日号

No.192

銀座一丁目新聞

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お耳を拝借(60)

-相性

芹澤 かずこ

 

 現在の日本の人口は、推定で1億2千7百万人とか。途方もない数ですが、たまたま同じ電車に乗り合わせたと言うような一過性の出会いは別として、一人が一生に出会う人の数は、その内のほんの一握りに過ぎません。その少ない出会いを「ご縁」と思って出来るだけ大切にしたいと思っていますが、中には一緒にいて気疲れしてしまう人などもいて、付き合いを持続出来る人はより少なくなってしまいます。
 馬が合う、反りが合わない、などともよく言いますが十人十色で性格はみな違うし、相手にも感情があり、無論自分も持ち合わせている。それでも素直に意見を受け入れられる人もあれば、相容れない場合も多々あります。相性って一体なんなのでしょう。
 十何年か前、10人ほどの仲間との旅行の折り、日頃から個性の強い二人が駅のホームで言い争いを始め、それがきっかけとなって長く続いたその旅行会が解散になってしまうということがありました。「まあまあ」と中に割って入って上手く裁く人材が、私を含めて不足していたことも大いにあります。
 けれど言い合いの発端は些細なことでしたが、長い付き合いの中で誰もが普段から何となく不満を募らせながら、表面に出せなかった鬱憤(うっぷん)を二人が代弁したような形でした。それなのに、場所柄も加味していたとはいえ、よく有りがちなプライドから誰もどちらの側にもつかず「勝手にやってよ」とばかり静観してしまったのです。5分5分でも7・3でも分れて喧々囂々(けんけんごうごう)と腹の底をさらけ出したら、きっとそれまでの上辺だけの仲の良さからもう一歩踏み込んだものになっていたと思います。
 歳を重ねると性格が丸くなると思われがちですが、これは全くの思い違いで、自分を含めてだんだん頑固になってゆくようです。当の二人も未だに合い寄る気配はサラサラなく、残党は“やじろべい”さながら、さり気なく均等を保っています。



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