2002年(平成14年)9月10日号

No.191

銀座一丁目新聞

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安全地帯(21)

−存亡の危機の宿場町−

−真木 健策−

 信州の木曾路といえば妻籠、馬籠宿が有名である。中仙道の宿場町で、江戸時代の名残を今もそのままに伝えている。島崎藤村ゆかりの地で知られ、観光宿場町として観光客がひっきりなしに訪れている。
 馬籠(山口村)は隣接する岐阜県中津川市と県を越えての合併が決っている。歴史ある宿場町が長野県からひとつ消えるのは寂しい。そこから約9キロ離れた妻籠(南木曽町)はそのままである。妻籠宿には年間百万人を超える観光客がくる。
 昭和43年に始まった町並み保存事業によって、全国的になった。ことに51年に国の重要伝統的建造群保存地区の第一号選定を受けて以来、観光客の人気を集めている。その反面町や宿場町の関係者は大きな悩みに頭を抱えている。
 妻籠宿観光案内所の話では過疎化に高齢化が拍車をかけ、一時57軒もあった民宿が12軒に減った.このままだとまだ減るだろうという。旅館の廃業も目立ち、現在は2軒あるだけ。土産店もままならない。
宿場町にある寺下地区は幼稚園児から小学、中学、高校生は一人もいない。後継者難は宿場町の存亡の危機をはらんでいる。土産店にしても観光客が日中に集中しているので、朝9時は課10時に店を開け、夕方は5時には店を閉じてしまう。
 道路をはさんで両側に家並みが続き電柱は見られない。電柱はすべて家並みの見えない裏側に立ち、電気を引き、昔をしのぶ宿場町を再現、保存につとめている。保存地区だけに勝手に建造物の増改築は出来ない。山林も許可なしには一本の木も伐採できない、厳しい制約がある。旅館の各部屋にはテレビはない.但し明るい電灯、扇風機はある。往時をしのぶ木造建築、資料館、郵便局内にある郵便の変遷を知る資料だけでも、ここは貴重な存在である。いつまでも大切にしたい。

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