安全地帯(12)
−リハビリに励む女性−
−真木 健策−
先日、病院で60歳の婦人と話す機会があった。聞けば、3年前に自宅で脳卒中で倒れ、救急車で運ばれ、しばらく入院したあと、退院、今は時折、リハビリにきているという。倒れてからしばらくは、腕も上がらず、失語症になり、言葉も満足にしゃべれなかった。いつも病院に来る時はリハビリを兼ね自宅から一時間歩いてくるそうだ。もちろん帰りも歩く。それが良い運動になる。見れば元気そうで、我々と全くかわらない。その努力には敬服する。
もともと、人間には自然の治癒力がそなわっている。それが歩くことによって増してくると言われている。自分の体を守るのは、医者ではなくて、自分であるということを多くの人が気がついていない。気がついていてもそれをなかなか実行できない。例えば、朝の散歩は体によいのは誰でも知っている。これができそうで出来ない。いろいろ理屈をつけてサボってしまう。
だから、一度病気で倒れた人の方が、苦しんだだけ生きる意欲が強くなり、健康のための努力ができるのであろう。
脳卒中の後遺症で体が不自由な毎日新聞の牧太郎さんは「障害も個性のうち」といまなお健筆を振るっている。牧さんも、右半身の自由を奪われ、言葉を無くし、絶望の淵に沈んだ。死の誘惑にも誘われた。それを乗り越えてきた。雨が降らない限り、散歩を日課とし、歩くことを自分に義務づけていると聞いた。「体は自分で守るものである」と早く悟るべきである。 |