1998年(平成10年)10月1日(旬刊)

No.53

銀座一丁目新聞

 

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茶説

「色即是空」喝!クリントン大統領

牧念人 悠々

 クリントン大統領の女性問題は、いまはじまったわけではない。州知事時代からくすぶっている。

 よく言えば、「英雄、色を好む」である。悪くいうと、一種の病気だ。よくいう“また悪い虫が出た”である。

 本人はわかっている。好きなタイプの女性にはついつい“悪い虫”が動き出す。二人の宗教的カウンセラーがついたそうだが、52歳の大統領に、毎週のカウンセリングがきくかどうか、きわめて疑がわしい。

 ケネス・スター特別検察官の報告書、大統領の証言のビデオ公開など世界中に好奇な話題をばらまいた。とりわけアメリカの小さな子供を持った親たちはさぞ困ったことであろう。

 最終的にクリントン大統領の退陣の決着をつけるのは、世論であろう。フランスの大統領ミッテラン(故人)の場合、愛人と子供の存在が明らかになった際、これは大統領のプライバシーに関するとして問題にならなかった。今回も、仏ルモンド紙のエドウィー・ブルネル編集局長が「不倫する大統領も魅力的だというのが、われわれの考え方だ」(923日号ニューズウィーク日本版)というように、おおらかである。

 日本では平成元年、宇野首相が女性問題で辞任した。相手の女性がマスコミに訴えたことから明るみに出た。これまでマスコミは政治家の女性問題は比較的寛容で、めくじらをたてない。

 この時、問れたのは、首相としての器量であった。情をかわしながら、訴えられるような“不適切な交際”しかできない男に、一国の首相の座をまかしておいていいのかということである。

 女性問題にその人の人柄がにじみ出る。宇野首相は余りにも小心翼々すぎたようである。文人として文才豊かな首相に“魔の出来事”だったかもしれない。

 クリントン大統領にしてもそうである。はじめから“不道徳な関係”を認め、下半身についてはプライバシーに属するのでごかんべん願いたいと主張すればよかった。どうも素直な性格ではないようである。

 それでも、大統領の支持率が50%をこえるのは、クリントンの政治的手腕を認めるからであろう。その人気もそう長くはつづくまい。般若心経では「色即是空」(色はすなわちこれ空なり)と教える。「あらゆるものにとらわれるな」と説く。

 「色即是空」喝!クリントン大統領。

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