1998年(平成10年)10月1日(旬刊)

No.53

銀座一丁目新聞

 

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スーパーウオッチング(4)

麻根琴美

 はっきりとした梅雨あけもなく、次々とやってくる台風。もしや、今年は天候不順で米不足になるのではと心配した。815日付、農林水産省の米の作柄を示す作況指数が全国平均「99」ということで、ひとまず安心だが…。

 思い出される5年前の米騒動。当時の首相細川の殿様が「今年は冷夏の被害が大きい。コメが足りない。」と失言。庶民がパニック。日本米を求めて、朝6時からスーパーに長い行列ができた。

 決まって並ぶのは35歳以上の年配の方。オイルショックを経験したにもかかわらず、その教訓は生かされていなかった。「1ヶ月5キロ位しか食べないの。家には20キロ備蓄があるんだけど、心配だから今日も夫婦で買いに来ちゃった。やっぱり日本米が食べたいもの。」という老夫婦は何度も行列に並んでいた。

 その頃のスーパーは米の売り出しが終わればガラガラ。米の販売方式も日本米5キロにタイ米が3キロ付いてくるという抱き合わせ式。日本米が欲しければ、タイ米も買わなければならない。

 そこで私達マネキンはタイ米をいかにおいしく食べるかをお客様に知らせるため、仕事を開始。そして感じたこと。「日本人はブランドイメージに弱い。」

 確かにタイ米は日本米に比べ臭いが強く、粘りがない。ならばその特性を生かし、カレーやピラフにして、食べやすくして試食を展開してみようと奮闘。すると、変な先入観のない子供は「おいしい」と喜んで食べるが、大人は口にもせずに「まずいから」の一点張り。

 おいおい、おいしく食べるためにどれだけ研究したことか。だまされたと思って一口だけでも食べてみてと何度思ったでしょう。米騒動は日本人像を浮き上がらせた。「一つの現象に対し、冷静に対処できない。」だって米は日本で一番自給率の高いもの。翌年も不作とは限らない。一生、米不足は続くわけではないと、ちょっと考えれば分かること。

 それに「マインドコントロールに弱い。」スーパーは、タイ米が日本人の口に合わないと知っていた。そこで、売れ残らせないよう、スーパーが発刊元の主婦向け雑誌は、タイ米をおいしく食べるための関連商品をあの手この手で大特集。備長炭を使えば、ひと味違う。この水で炊けば、日本米に近い味になる。ここぞとばかりに売り込み、それらの商品の売れたこと売れたこと。

 忘れないで。米騒動の原因は、皆が備蓄したがったからだということ。そして、冷静さを失わないで。でも、ことわざに「喉元過ぎれば、熱さを忘れる」っていうのがあったわねぇ。…

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