2007年(平成19年)2月1号

No.349

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安全地帯(168)

信濃 太郎

なんとしても勝鬨橋をあげよう

 写真家の加藤豊さんから「PONTE」(「勝鬨橋あげる会」情報誌・2006年秋冬号NO.26)を頂いた。加藤さんとは彼が昨年7月、東京・有楽町交通会館で開いた「閉じられたままの勝鬨橋 その造形と情景」の写真展で知り合った(昨年7月20日号「安全地帯」参照)。その際にも紹介したが昭和15年開通した勝鬨橋は日本でも珍しい二葉跳開橋である。その跳開も昭和45年11月30日に閉鎖されたまま今日に至っている。それを「跳開しながら永久保存しよう」というので、日本大学理工学部教授伊東孝さんが中心となって「勝鬨橋をあげる会」がささやかで健気な運動を続けているという。加藤さんも勝鬨橋の写真をとりつづけているうちにこの運動に共鳴、参画している由。勝鬨橋は隅田川の玄関橋、そこの中央部が跳開するのはロマンがあってよい。一幅の絵になる。大都会に必要にして欠くべからざる「美的情緒」である。
 「PONTE」NO.26に鹿島昭治さんが勝鬨橋をあげる理由について書いている。「最近、ため息が出るような暗いニュースが多く、先が読めない時代背景に、人の心も暗くふさぎ込みがちである。そんな中で人の心をぱっと明るくさせたい。橋は、一見人の日常生活の中で会って当たり前の、 どうでもいいもの、このような日常に埋もれるモノに潜むドラマを掘り起こすことで、人の心に感動を与えたい。勝鬨橋はそれを見せることが出来る出来る一級の素材である」
 都市の経済合理性を説く人からは拒否されるかもしれないが、都会生活者には生活する上で「美的情緒」がどうしても必要なのである。そうでなけれな都会は砂漠になってしまう。公共事業にも「野に咲く一輪のスミレを美しいと思う心」がいる。その一輪の美しいスミレが「勝鬨橋の跳開」なのである。人間は大きな誤解をしている。科学、理性、合理性を万能と考え、経済合理性、市場原理主義を追及する。その行く先は砂漠であり、地獄である。この世の中にはそれだけでは説明できないものが少なくない。世の中のひずみをとく鍵が意外と「美的情緒」であると訴えたい。勝鬨橋をあげる会には心から声援を送りたい。

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