2007年(平成19年)2月1号

No.349

銀座一丁目新聞

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山と私

(30)
国分 リン

−大きな大陸・中国雲南省 梅里雪山(カワカブ)を望む−

 NHKの朝のニュースで日本の海外登山史上最悪の遭難から15年遺体捜索活動を乗り越えフリーのカメラマンになった小林尚礼氏と聖山・梅里雪山(カワカブ)の姿が強烈な印象で残った。ゴールデンウイークの連続9日間の休暇を有意義にとスポニチの古谷先生(現風の旅行社)お勧めの・世界遺産「三江並流」とシャングリラの聖山・梅里雪山を望む9日間に山友Uさんを誘い参加した。
 
 「梅里雪山(メイリー・シュエシャン)」は、中国南西部にそびえる長さ30qの山群の総称である。そこには6,000m以上の頂が6つ、一年中雪におおわれる頂が20以上ある。山群の最高峰(6,740m)は、チベット語で「カワカブ(白い雪)」と呼ばれている。梅里雪山は、チベット自治区・四川省・雲南省にまたがる「横断山脈」の怒山山系に属する。梅里雪山の周辺では、金沙江(長江の上流)・瀾滄江(メコン川の上流)・怒江(サルウイン川の上流)の3つの大河が、わずか70qから100qの幅で平行して流れ、「三江併流」と呼ばれる大峡谷地帯を形成している。急流によって侵食されたその山容は険しく、またインド洋から吹くモンスーンの影響のため、一年中多量の雪を頂いている。と上記小林尚礼氏のホームページで紹介されていた。
 
 4月29日(土)成田空港へ7時30分に着く。風の旅行社古谷先生に搭乗手続きをしていただき、添乗員の鈴木雅子さんを紹介された。飛行機の関係で私たち2人は全日空便の広州経由で昆明へ。予定より1時間遅れの21時半に金龍飯店へ到着。中国の広さを知る。
 4月30日(月)早朝中国国内線40分で麗江へ、8時にマイクロバスへ乗り込む。女性9人・男性5人に鈴木添乗員と中国人ガイドのヒョウ氏とチベットガイドのリン氏とドライバーの18人での7日間の旅の始まりである。始めての中国国内旅行、町並みをキョロキョロ興味深く眺めた。雑然としているが、活気を感じる。瀾滄江沿いの道をひた走り谷間の村の維西が今夜の宿である。
 5月1日(火)宿の朝食はお粥と野菜スープに野菜炒めが3種類美味しい。
またバスに乗り込み小さな村々を過ぎると、バスが止まり中国ガイドのヒョウ氏が地元のおばさんを連れてきた。滑車で河を渡るという。荒川ほどの川幅があり、急流で深い谷間に鉄のロープが往復2本張られ、滑車を掛けると勢いづいて対岸まであっという間に行き、戻ってきた。一つの交通手段らしい。勇気が必要だ。日本では見たことがない。 またバスに乗り込んで山間の道をひたすら徳欽へ、途中中国人ガイドのミスで、19世紀フランス人がアヘン戦争のころ布教に来て建てた天主教会への道を通り過ぎ、戻れば2時間も遅くなるので今回はキャンセルになる。飛来寺近くのカワカブ展望台へ到着。雲の中から白く輝く円錐形の山塊が見える。カワカブと教えられ興奮する。雲が覆い、見え隠れする大きな頂に思わず頭を垂れる。 タルチョ(お経が書かれた五色の旗)がたくさんはためき、線香の煙が風になびく。私達も線香とタルチョを求め、この旅の無事を祈る。
深い渓谷の道を下り氷河見学の出発地点明永村(ミンヨン)が今夜の宿である
 5月2日(水)予定が馬の手配の変更で、トレッキング開始、標高差1400mを歩くと登り4時間、馬で登ると2時間弱とのこと。6時半にバスに乗り込み馬が待つ西当村(シーダン)ヘ、たくさんの馬と馬子達が群を成している。30分も掛かりやっと私たちの乗る馬の一団が決まった。またそこで籤引、私の荷物はカメラが入り重く戻され、結局自分で背負い馬に乗る。始めての馬、鐙に足が届かずやっと鞍に乗るが目線が高く驚き、緊張で手綱を握る手も硬く、最初は怖くて落ちないように必死、でも慣れるに従い馬のパカパカに合わせて身を委ねることと信頼するのがコツと判る。次第に周りの景色を見る余裕が出る。なんとピンク濃淡色に咲く石楠花のトンネルである。前後左右に老若男女の馬子達が鞭をもちゴム草履で息も切らさず馬について登る。生活の為とはいえ凄い。多くのタルチョが石楠花に結ばれた地点ナゾヤ峠(3750m)へ、馬から降ろされ前方に大きな白い山々メツモ(カワカブの女峰6054m)やジャワリンガ(5470m)が青空に映えている。撮影スポットを探していると中央に大きな台が作られ梯子で登るとお金を請求されそこが山の撮影場所らしい。ふと気がつくと馬達はもう次の仕事のため峠にはいない。昼食をすませ、梅里雪山の内院でキャンプ地の雨崩村(ユボン3000m)ヘ歩き出す。のどかな山道を下り民家がみえたらそこが村の入口で上村と下村に別れるがそこはのどかなとても3000m地点とは思えない暖かな場所である。下村のキャンプ場は広い野原で小川も流れている。テントは慣れていないのか1時間以上掛かり、張られた。ここからの眺望は奇峰・5冠神山(5470m)が素晴らしい。夕食は傍の民宿で準備された美味しい中華を頂く。
 5月3日(木)梅里雪山の氷河から流れ出る聖なる滝(神瀑3600m)へのトレッキングを8時開始、聖地らしくタルチョや賽の河原に地蔵様が河原一面に祀られている。そこを通り過ぎると石楠花が咲き乱れている。日本の山地とは違う広々とした風景に胸が躍る。休憩をしながら最後の急な登りになると40cm程の積雪の中歩くようになり、景色が一変する。最後の100m急坂を登ると聖なる滝(神瀑3600m)への尾根になり15分ほどで目的地の神瀑3600m到着。
100m幅の大きな飛沫、中国人は神瀑に打たれながら願いを唱えていた。次々とこの神瀑へ登ってくる。聖地なのだ。下りはのんびり皆と景色を楽しんでテント場まで帰る。甘くておいしい現地のスイカをご馳走になる。夕日の風景は忘れられない。
 5月4日(金)朝日が素晴らしく5冠神山を赤く焼く。民宿のテラスで朝食を摂りながらの山の大きさは中国ならではと思う。今日は下ってきた道を馬で登り返し、ナゾヤ峠からは逆に花(桜草)を探しながら歩く。たくさん見つけシャッターを夢中で押しながら歩く。楽しい。西当村へ戻り、車で明永村。
いよいよ京大遭難の遺留品が見つかった明永氷河の展望台を目指す。馬での登りに味を占めた私達と、歩くグループに分かれ挑戦。山道は両脇に紫のあやめが咲き続く。氷河の末端は滝になり、その上は泥にまみれている。観光ルートらしく鉄柵が掛けられ、木道(日本と違い横にキチンと張られている)が続き、階段も変化に富んでいる。午後3時ごろ広い展望台に着いた頃は雲が邪魔をしてカワカブは見えず、でも氷河の凄さは伝わる。それに氷河の脇には緑が濃くネパールの氷河との違いが判る。この道の途中は登山禁止の立て札があちこちに掛けられている。この聖なる山は未踏峰なのだ。
 5月5日(土)早朝6時に飛来寺に再びカワカブの姿を求めて訪れる。雲が厚く今日は残念ながらである。京大の慰霊碑に案内されるが、無残に日本人の名前が消されているのに残念な思いに浸る。亡くなられた方々は皆同じなのに。
 車で今日は香格里拉(シャングリラ)理想郷へ向かう。延々と続く車道を走り、白茫雪山(ハクパーセツザン)展望台(4300m)は360度の大パノラマ
日本では見られない広い広い景色である。この眺望も私たちだけとは驚き。
また車で走るとマツタケと冬虫夏草が取れる産地に、テントが並んでいる。次にチベット仏教ゲルク派の寺院・東竹林寺へ詣でる。赤い塀、茶色い窓、平らな屋根を持つ建物は一つの町のようである。大経堂は4階建てで、ラサのセラ寺からもたらされた高さ10.5mの金剛仏は、宝冠と胸飾りに真珠や宝石がちりばめられ、見事である。修行僧の若者の姿を数人見かける。この山奥にこの建物は見事としかいえない。納?海湿原(ナーパーハイスーリー)の広大な景色は香格里拉に近い。今夜の宿泊地は今までにない立派な古典中国家具に囲まれた松賛緑谷酒店で、お気に入りの宿である。オプションでチベット民家でのチベット料理を食べにいく。民族衣装での踊りや唄のショーがあり、子豚の丸焼きもあるがこれはあくまで観光用で私はがっかりする。
 5月6日(日)雲南省最大を誇るチベット仏教の名刹・松賛林寺を朝一番に参拝へ出かける。この寺は清代康熙18年(1679)、ダライ・ラマ5世の発願で創建され、総面積は34万uと広大。寺院は5層からなるチベット式彫刻建築で、堅固な城壁と5つの城門を備えている。寺院内にはダライ・ラマ5世と7世の銅像、8体の金箔釈迦如来像や貝葉経など、貴重な文物が多数所蔵されている。と中国ガイドのヒョウ氏の説明を受ける。広大な丘陵にこの松賛林寺がチベット民族の人々を守るかのように聳えているのである。厚い信仰心を思う。
私たちが参拝を終える頃、着飾った大勢の人々が参拝に詣でた。日本の門前町のようにお土産屋が軒を連ねていた。この松賛林寺の全景を撮ろうと場所を探したら見張りをしている地元の人にお金を要求され驚いた。車に乗り込みひたすら麗江へ戻り、お土産買いをして16時チベットガイドのリンさんと別れ、国内線で40分昆明へ到着。20時に金龍飯店で最後の豪華な中華料理を頂く。
 5月7日(日)早朝6時30分に昆明空港へ、皆と別れて国内線110分で広州空港へ到着、広州の旅行会社の出迎えを受け、準備された昼食を頂く。足裏マッサージを友と一緒に受け、疲れをとる。広州空港14時50分発全日空便で所要時間4時間10分成田へ無事到着20時であった。
 今回始めての中国訪問であったが、とにかく広大であること、中国の観光に対する貪欲さが感じられたこと。道路は舗装されているが、落石箇所や路肩に危険がある。途中のトイレが整備されていない。が、聖山・梅里雪山は素晴らしかった。

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