2006年(平成18年)10月1日号

No.337

銀座一丁目新聞

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競馬徒然草(92)

―ディープインパクトと馬券― 

 ディープインパクト関連の記事が連日スポーツ紙に取り上げられた。1頭の馬がこれほど話題を提供したことは、かつてないことだ。その話題のひとつに、馬券に関することがあった。凱旋門賞当日、ディープインパクトの馬券を「日本語で買える」というものだった。
 凱旋門賞の馬券を買う際の投票用紙は、もちろんフランス語で印刷されている。その記入の仕方にも、慣れない日本人は戸惑う。日本からの応援ツアー参加者も多く、ロンシャン競馬場での混乱が予想される。そこで、日本人ファン用に、オリジナルの投票用紙が作られた。馬券の種類のほかレース番号、馬番号、金額(最低2ユーロ=約300円から)を書き込んで、窓口に出せば購入できるというわけ。
 フランスの単勝馬券には競馬場、レース番号、馬番号、金額は書いてあるが、馬名は印字されていない。日本とは事情が異なる。そこで日本式に馬名を入れることも提案されたが、馬名を入れることについては、コンピュータプログラムの変更が間に合わなかったそうだ。その代わり、馬券購入の際の投票用紙には、「ディープインパクトの単勝」なる項目を作り、金額を記入できるようにした。日本人用にこうした計らいをしたのは、かつてないことだ。
 日本には記念のために単勝馬券を購入するファンがいるが、フランスにはいないようだ。そんなことにまで話題が広がったのだから、ディープインパクト人気は大変なものだ。考えてみると、単勝馬券を「記念」として買うような傾向が強まったのは、皐月賞時の ディープインパクトからであった。その後、2冠を制するダービー時、さらに3冠目の菊花賞時には一挙に拡大した。その傾向が凱旋門賞まで続いたというわけである。単勝馬券に「記念」を求めようとするのは、一つの「証し」のように思われる。同時代を生きたものとしての「証し」を、ファンはディープインパクトに求めているのではないだろうか。

( 新倉 弘人)

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