2006年(平成18年)9月10日号

No.335

銀座一丁目新聞

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花ある風景(248)

並木 徹

「子供を激励、賞賛して育てよう」

  毎年、「ミズノ株式会社」の会長、水野正人さんから誕生日カードを頂く。いつも良い刺激を受ける。感謝のほかない。ことしは話題を呼んだドロシー・ロー・ノルトの「こども」(翻訳書がいくつか出版されている)の一説が引用されていた。
1、激励を受けたこどもは自信を覚える。
2、寛容にであったこどもは忍耐を覚える
3、賞賛を受けた子どもは評価することを覚える
4、フェアープレーを経験した子どもは公正を覚える
5、友情を知る子どもは親切を覚える
6、安心を経験した子どもは信頼を覚える
7、可愛がられ抱きしめられた子どもは世界中の愛情を感ずる事を覚える
 初めに負の面について書かれていた。「批判ばかりされたもの」「殴られて大きくなったもの」「笑いものにされたもの」「皮肉にさらされたもの」などの場合、子供に悪影響を与えると言及してあった。
 もともと言葉は子供にせよ大人にせよ影響を与える。侮蔑的な言葉、悪態、野卑な言葉などは心にぐさりとトゲのように刺さる。感受性の強い人は病気になるほどである。私の20歳までのことを考えるとノルトの言うことは確かであろう。小学生まで勉強が余り好きでなかったが、中学二年生の時、英語と地理の二人の先生にほめられたことで勉強する気になった。意欲が出た。中学生の時、寄宿舎に入れられたので生活は規則正しく、上級生もおり、わがままは許されなかったから我慢や忍耐することを自然に覚えた。「寛容」とは余り関係ないように思う。満州育ちの私は小学校も中学校も廃校になってしまった。とりわけ中学校の友達は絆が強い。親切を通り越している。7人兄弟であったので母親に抱きしめられたという記憶がない。だから「世界中の愛情を感ずる」事はない。それがただ一つの欠点であろう。とかく思いやりの欠けるのはそのためかも知れない。その反面自立の精神は人一倍強い。
 それにしても昨今少年の犯罪が目に付く。女子学生を殺し、挙げ句の果てに自殺した19歳の同級生、この学生は「殴られて大きくなったのだろうか」。母親を友人に殺害させた16歳の高校生は「批判ばかりされた」のであろうか。16億9000万円の裏金を作った岐阜県庁の役人たちは「フェアープレーを経験した」ことがないのであろうか。世の親たちはノルトの「子ども」をよくかみしめて読まねばなるまい。紀子様の男子出産にあやかって都内の本屋の育児コーナーにはノルトの著書が並べられている。

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