安全地帯(154)
−信濃 太郎−
ゴリラから学ぶべし
こやま峰子さんからその著書「大きな友だちゴリエア」(絵・岡本順・佼成出版社)が送られてきた。85ページの本.なかな面白い。大型類人猿学会員 ゴリマ ミネコの結論は「ゴリラは自分達から攻撃はしないが仲間を守るときだけ闘う。とても頭がよく平和的な動物であり思いやりのある動物である。人間が見習うところがいっぱいある」という。ゴリラはこれからも人間が大切に保護してゆかねばならない動物なのである。
一夫多妻で、主人公リーダーのシルバーには三人の奥さんがいる。ボウーキにはブルルとデージ(2歳)の二人の子どもが。サジマロにはゴン(4歳)が。ルナには生まれたばかりのギリーという赤ちゃんがそれぞれいる。まもなく白いゴリラの女の子が捨てられているところを拾われてルナがホキと名付けて我子同然に育てる。我子同然というのはホキが病気になって時、研究者・アンに助けを求めて病気を治してもらうからである。ゴンとギリーが密猟者のワナにかかって傷を負った際にもアンやブラウンに助けて貰い治療を受ける。
ゴリラは草食動物でマンゴのような果物ヤセロリのような草木の葉っぱ、木の皮を食べて暮らしている。滅多に水はなまず、体が熱っぽい時だけ水を飲むという。胸を叩きポショポショと音を出すのを「ドラミング」と言う。この音は2キロ先まで聞こえ「ここに美味しい竹の子があるよ」とか「元気だよ」という合図にもなっている。咳のような声を出すと、近くに怪しいものがいるぞという警戒警報という。近づいてくるヒョウを撃退するのはリーダーの役目である。ママさんたちも協力して竹の枝を投げかけたりみんなでほえたてたりする。
アンはゴリラの糞を研究材料にするが、ゴリラは自分の糞を消化をよくするために食べることがある。
シルバーは子供達をわざと危険地帯近くに連れて行ってシマウマの赤ちゃんがライオンに食われるところを見せる。「危険場所」を知らせるためである。人間の親はこんなことをせず、子供がシュレッダーで手を切断すると、自分の不注意を棚に挙げてメーカーに注意してくださいと文句をいう。ゴリラにも劣る今の親達である。
ゴリラの住処である森は次第に開発の名のもとに狭まれている。ゴリラの絶滅が心配されている。動物の生き方から何も見習わず、自己中心的になりつつある人間にこの本は警鐘を鳴らしている。 |