小泉純一郎首相の在職日数は4月10日で1811日となり、戦後三番目の長期政権になった。平成13年5月1日号本誌「花ある風景」は小泉首相の登場を「永田町の論理を突き崩し、利権をあさり、党利を優先する政治に自民党の党員、党友が拒否反応を示したと言える。その意味では画期的な出来事である」として、吉田茂元首相(在位2位・2616日)と比較しながら「意外に長く続くかも知れない」と予測した。結びとして「十八史略」にある「人を見る明」を紹介した。
1、人相を見る
2、出処進退の退をみる
3、応対辞令、つまり言葉のやり取り、態度を観察する
4、修己治人、徳の人であるかどうか(伊藤肇著「十八史略の人物學」)
国民は冷静に小泉首相を「人を見る明」で見守っていこうと呼びかけた。
それから5年近く国民の反応は見事であった。支持率は40パーセント台を常時維持した。とりわけハンセン病訴訟で控訴を見送った(平成13年5月23日)際には高い支持率を記録した。「修己治人」を国民は判断した。郵政改革の是非を問う衆院選で自民党が296議席を獲得した(平成17年9月11日)ときも60パーセントを越える支持率であった。国民はしかと首相の「応対辞令」を診たのである。多くの新聞、識者などの論評は的外れであったというほかない。
首相は議論する相手を「抵抗勢力」と単純化すると識者はいう。単純化ではなく本質を突いている表現である。政策を「丸投げする」と新聞はよく使った。政策を実施するのは所管の大臣以下である。上の者は指示するだけでよい。上にたって仕事をしたこともない人間がわからないので「丸投げする」という言葉を使うに過ぎない。日本語では「指示する」というのである。
新聞は中曽根康弘元首相(在位4位1806日)と比較する。似ているが本質は違う。小泉首相は靖国神社参拝をあくまでも「心の問題」として続けている。中曽根元首相は途中で参拝を中止し、今では小泉首相の参拝に反対している。小泉首相が「運がよい」といわれる。芥川龍之介は「運もその人の性格のうち」といっている。その運は小泉首相の性格がもたらしたものである。この5年近く小泉首相には「天の時」「人の和」「地の利」すべてが味方した。出処進退が
一番難しいといわれる。とりわけ「退」を誤る人が多い。小泉首相は今年の9月と決めた。これも見事である。歴代の首相で予め退陣を決めた人はいない。国民はこの「退」を知っているから今なお高い支持率を与えるわけである。この賢明な国民を政治家も新聞もテレビもとりわけ中国は軽く見たらしっぺ返し食らうことになるであろう。 |