2006年(平成18年)4月10日号

No.320

銀座一丁目新聞

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安全地帯(140)

信濃 太郎

 好き雨は時節を知る

 恒例の高尾の観桜会に出かける(4月8日・高尾森林科学園)。参加者26名(女性4人)。元林野庁長官の秋山智英君が姿を見せる。病で一ケ月入院していたという。元気な顔に安心する。科学園長の話では今は「そめいよしの」が満開とのこと。入り口には寒緋櫻が赤い花を見事に咲かせていた。純白の「白妙」や黄色の「御衣黄」が見られなかったのは残念であった。例年よりは花見客が少なく感じた。 降り出した雨にみんなの足自然と速まる。花より二次会か。ふと多摩地区代表の植竹與志雄君の夫人京子さんの句が浮かぶ。「男恋ふ迫り出る花一枝」すごい句である。私はこの一句に脱帽する。来る電車の中で「杜甫詩選」(黒川洋一編・岩波文庫)をひもといた。その中で「春夜喜雨」が目に止まる。「好雨知時節 当春乃発生 随風潜入夜・・・・」なるほどよき雨は降るときを考えて酒をこよなく愛でる友の花見の足をとめるのかな、すこしこじつけか。
 高尾山口の栄茶屋の二次会は盛り上がる。前田孝三郎君がきていた。2月にテレビドラマの「家政婦は見た」のロケ現場に同期生を案内してくれて主演の市原悦子さんや池内淳子さんを紹介、記念写真までとった。その時一緒だった上田広君、鈴木洋一君、美人の斎藤さんも席で楽しそうに語っている。私の隣にいた西村博君は森戸辰男さんが衆議院議員の時、公設秘書をしていた。秘書当時の苦労話を聞く。感情を表に出さず、その上寡黙な森戸さんの人柄ゆえに秘書は言葉使いや仕草で気配りし推測して、わきまえておかなければ仕事が出来ないとか、運転手に好かれる秘書であれといった話であった。羊毛の仕事でオーストラリアに21年間も住んだことのある田村庄次君は対日感情の悪い中で隣両三軒を自宅に招いてよく奥さんの手料理でパーティ―を開いて親睦を深めたという。同期生はみんなそれなりに苦労をしているのだなあと感じ入った。そんな話を聞き、その苦労をかみしめながら同期生の絆がますます深まってゆく。歌は軍歌も出たが「星落秋風五丈原」や「ホロンバイル小唄」「戦友」なども歌われて座をしっとりさせた。杜甫の「酔時歌」に「生前に相い遇うては且つ盃をふくまん」とある。ともかく杜甫も飲もうといっているのである。好(よ)き雨であった。

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