2005年(平成17年)12月1日号

No.307

銀座一丁目新聞

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安全地帯(128)

信濃 太郎

 柿食えば騒がしくなる銀座一丁目

 銀座の事務所で一緒に働いている浅野弘嗣君のお母さん雪江さんから柿が二箱届いた。一つは富有柿もう一つは次郎柿である。二種類とも美味であった。事務所内がたちまち明るく騒がしくなった。日頃から知的雰囲気のあるこの事務所としては珍しい。
 そこで一句「柿食えば騒がしくなる銀座一丁目」もちろん、子規が法隆寺の茶店で読んだという「柿食えば鐘が鳴るなり法隆寺」が頭にあっての駄句である。柿の種類は少なくない。赤柿、百目柿、御所柿、鬼貫の句に「御所柿のさもあかあかと木の空に」とある。このほか禅寺丸 、伽羅柿、蜂屋柿、西條柿などがある。浅野君宛の雪江さんの手紙が添えられていた。「風邪は良くなりましたか。柿でも食べてたっぷりのCをたくさん摂ってください。付近を歩いていると、柿の木に一箇だけ柿の実を残しているのを良くみます。それは木守(きもり)と云って@木の番人A木に残しておく果実B最後の残ったもの 最初は3つの意味があったのが来年の豊作を願って一箇だけ木の上に残しておくことがいつしか木の上に残った柿をさすようになった。柿は世界の人に愛され、KAKIで世界に通用するようになりました。『木守柿留守居の老人の一人なる』(松山鵜川)」お母さんの愛情がいっぱいあふれている内容である。
 同封の中日新聞の永山久夫さん(食文化史研究家・西武文理大學客員教授)のエッセイによれば風邪にはビタミンCがよくきき、大きめの柿一個食べるだけで一日の所要量はたっぷりとれるという。二日酔いにもよいらしい。江戸時代の「本朝食鑑」にも「渇きを止め 、酒毒を解す」とある。この冬は大いに風邪予防のため柿を食うことにしよう。

     「柿食ふや遠くかなしき母の顔」 波郷

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