2005年(平成17年)12月1日号

No.307

銀座一丁目新聞

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花ある風景(221)

並木 徹

福田区隊長の遺品「振武録」を読む

 陸軍予科士官学校、59期23中隊1区隊の福田潔区隊長(陸士51期・陸軍少佐)の長男浩人さん(長岡京在住)から区隊長の遺品「振武録」を送っていただいた(11月18日)。福田区隊長はすでになくなっておられる(昭和21年12月22日戦病死)が、「振武録」は昭和19年1月航空へ転科された区隊長へ区隊の者達が贈った寄せ書きである。貴重な資料である。戦時下の17、8歳の若者がどんな考えを持っていたが判る。前年の4月に入校した私たちにとって福田区隊長から受けた薫陶は僅か1年足らずであった。中国戦線で4年間にわたり幾多の作戦に参加された区隊長の指導は厳しいものであったけれども勘所を抑えた見事なものであった。温厚な人柄の方で敬愛された。
 『振武録』は縦16cm横9cmの折本形式である。初めに『ああ教え子よ 以て自己鞭撻の糧とすべし』昭和19年1月予科を去るに臨みてとある。あとに38名の同期生が思いのままに寄せ書きをしている。3人が二度書いている。区隊員40名のうち何故か2名 が寄せ書きをしていない。
 「磊落」武士(中村武士・山砲・故人)「剛毅果断」井下武厚(船舶)「明朗快濶」下川敬一郎(航襲撃)「不言実行」尾形富丸(消息不明)「朴直に然も自覚を以て 祈区隊長殿御武運」鈴木七郎(航整備)「殉皇に生きん!共に勇奮挺進致志ませう」 習志野の「タニシドノ」猛士松元虎男(工兵・故人)「区隊長殿の御教訓を守り新しき意気を以て頑張ります。区隊長殿の御武運長久を祈ります」柏木(柏木毅・消息不明)「無限ノ底力ヲ持タレ而モ悠々豊ナル心ヲ以テ自分等ヲ宏量潤達ニ御指導下サレタル区隊長殿自分モ必ズ大キナ気持ヲ以テ大空ニ雄飛セラルル区隊長殿ノ後ニ続キ一路突進シマス。ココニ区隊長ノ御健闘ヲ御祈リ申シ上ゲマス 」至誠純忠 習志野ノ金梧楼 高橋章次(航司偵・故人)「信念 祈武運長久」加藤弘之(航戦闘)「極天護皇基 御身御大切ニ」吉田昇(航・故人)「『操典は何日も持って来るんだよ』と何日も言われたあの言葉の中にあらゆる御教訓を得た様な気がします。アゴを出した習志野野営の陣内戦斗は深き思い出であります」上野四郎(航戦闘)「祈武運長久 身体の事で大変御心配かけました。きっと立派な身体になります」稲垣正雄(航爆撃・故人)「久堅の天の御空ゆ天かけり一つ尽くして事あり還りましますその日まで恙みなく立てしいませと言挙げぞする 純忠純忠 」金斗 暁(工兵)「南無天皇 見敵必殺 御武運ノ長久ヲ御祈リシマス」赤井英夫(歩兵)「重忠尚武 御教訓ヲ体シテ頑張マス 御健康ヲ御祈シマス」平賀桂一(通信)「御教訓ヲ体シテ明朗闊達気宇雄大ニ進ミマス 御活躍ヲ刮目シテ待ッテイマス」同ジ北鮮ニ育ッタ男橋本閑朗(機甲・故人)注ー区隊長の隊付は歩兵75連隊(朝鮮感興北道)橋本は羅南。「偉大ナル蜻蛉魂」清瀬弘一(歩兵・故人)「区隊長殿御手数かけました うんは々 ハッーハッ い― バタ操典なんかこだはる事はないよ 入校・非常呼集・区隊会・野営・遊泳 ビービー なごやかな顔 こわい顔 思い出はつきない この御恩に報いるにはただ本分に猪突邁進するだけだ 区隊長殿しっかりやります 区隊全員心を同じくして頑張ります 断 雄飛 一ツトヤ一ツノ命ハ国ノモノ国ノモノ捧ゲテ一緒ニ飛ビマセウ飛ビマセウ プロペラハ歌ウ 二ツヤーフトシタ故障ガアルトテモアルトテモ 周章テズ一緒ニ下リマセウ 下リマセウ」肥後中島良雄(航襲撃・故人)「戦闘機か将た爆撃機か然らずんば偵察機か福田区隊長殿の偉大なる御発展を祈って止みません 程遠き旅に別れる事は悲しくないものを同じ猫額大の内地の事世界の地図を開けば僅か一糎も離れていない所一つモ悲しくありません再会を待って居ります今後は彼の無言の最も恐ろかりし教訓を守って大いに頑張ります 区助頑張れ」肥後の英雄 隈部浩如(航)「区隊長殿色々ト御世話ニナリマシタ 古語ニ曰ク『会フ者ハ常ニ別ル』ト 此ノ理過ギテ覚ユル無言ノ中ノ偉大ナル御教訓必ズ守リマス『時期ヲ失ッタ事故報告ハ意味ナサン』『自分デ悪イト思ッタラ診断受ケルンダゾ」ト名残ハ尽キナイ 空、御健闘ヲオ祈リ致シマス」四国の武学生宗雪(宗雪美敏・航戦闘)「第一区隊ノ本領 克く眠り克くさぼる 蜚ばず鳴かざりし一年 御活躍を信じます」習志野ノ千鳥足 渡部章(航戦闘)「区隊の最右翼に存在して個人指導 戦闘教練等々すべて立派な(?)模範を示した櫻武士近くは航空体験の一丸の右翼として区隊長殿に心配を御掛けしました 区隊長殿も航空私も区隊航空の右翼として後につづきます」桜井武(航戦闘)「明朗ニシテ大イナル肚 私に与えられたる此教訓を必ず実践いたしますワシントン爆撃の暁には是非私も連れて行ってください」大内(大内豊樹・航襲撃)「古人曰く『会者必別」ト今私共ハ古言ヲ実践セントシテ居リマス増加生徒トシテ6月に遅レテ入校セシ私共五人ヲ僅か半ケ年ニテ他ノ者ト同一行動ノ出来ル迄特別に面倒ヲ見テ下サレ誠ニ有難ウゴザイマシタ。今度区隊長ニハ私共ノ憧レノ的タル航空兵に私共ヨリ先ニ御栄転ナサレオメデタウゴザイマス。私モ先日ノ個人指導ノ時ニシボラレマシタガ航空第一志望ノ一人デアリマス又コンナヘンナ句ヲ書キヨッタトオ叱リ下サイマスナ 我こそは大和男児ぞ空をゆく 「トンボ」慕ひてあまがけりゆく 習志野ノ陣内戦斗ニテ「丹羽」モ一度此処カラヤリナヲセト言ハレタ時ノ私ノ悲壮ナ顔ヲ忘レナイデ下サイ私モ区隊長殿ノアノ時ノオ顔ハ絶対忘レマセンデハオ体ヲ大切ニ 私モ必ズ後ニ続キマス」目玉ノ丹羽喜久雄(航戦闘)「明日ノ起床ハ八時・・・昔ハ固イ区助モ居ッテネ・・・ソンナコトデ駄目ジャナイカ、云ハレンデモヤルンダョ・・・区隊長殿ノ言葉一々脳裏ニコビリツイテイマス 要ハ 自主積極的に要点把握ニ邁進スルコトデアッタト思ヒマス」弱虫弱腹ノ斎藤俊三(船舶)「或ル時ハ慈父ノヨウナ気ガシタ或ル時ハ自分ナンカカマッテ下サランノジャナイカト云ウ気ノシタ事モアッタ然シソンナ時は何時モ自分ノ心ガ正シクナイ時ワダカマリガアル時ト気ヅイタ。一年ニチギリ 夫は靖国神社デ永久ニ結ビマセウ」うすのろ前田(前田靖雄・輜重)「振武台 雄健びて皇御武 振ひてむ いづこの野辺に我が身朽つとも」松虎(松元虎男・工兵・故人)「青空ハ日本男児ノ行ク所 熱血タギル青年ノ 意気ニ燃ヘ立チ一身ヲ 唯 大君ニ捧ゲント志ス天片ノ戦士ナリ 実ニ崇高ノ姿カナ 南溟ノ果北洋ニ 怒涛サカマク大洋に漠沙蜿蜒大陸ニ天カケル日本男児ノ血潮ゾタギタツ大東亜の護リハ我等航空ノ 制空権ノモトユルギナシ 鵬翼張リテ空オホヒ進ミマス 区隊長殿ノ英姿ヲ想像シツツ黙黙垂範 断 磊落 何等誇張サレナイ赤裸々ナル姿ヲ拝シ最モ感激深キ最も印象的ナ区隊長デアリマシタ 平勢ノ御訓育厚ク御礼申上ゲマス 区隊長殿ノ御壮健ナルコトヲ祈リ申上ゲマス 私ニトッテハ一生涯区隊長殿トオ呼ビさせ手イタダキマス」鈴紀俊行(船舶)「区隊長ハン色々オ世話ニナリマシタ.今此ンナ所で時ニ離レルノハホンマニエライソロオス。ナンボ云ウテモ大命ドスカラワタシハアキラメマフ.。野営ニ遊泳ニホンマニ面白オシタ.区隊長ハンノ優シイオ顔ノ在ルトコハイツモ愉快ドシタ。貴方ハンガ飛行キに飛ンデ白亞館デモブツコワシマセウ」ビワコノ愚鈍字(増田光男・航戦闘・故人)「発揚皇道乾坤 枯野原軽機 カヅキテアゴを出そ 擲弾筒 30ミリや 冬の空 」 尾張武士小出行正(歩兵・故人)「師魂  古今長府多武人 義剣振武断妖気 砲煙弾雨一剣摩 中州賊為寒肝胆 別離に臨み(誰も彼もホメルノデ)一生人に崇メラレ我モ常ニ欣仰能ハザル人ニ『福田区助ノ大馬鹿野郎』ト唱ヘマツル(大賢ノ愚ナルに似テヤハリホメルカ)増田光男『軍人ハシバシバ別レルツラサヲシノバナケレバナラナイト思ヒマシタ元気ニヤリマス」奥城(奥城丈夫・迫撃・故人)「入校以来色々有難ウゴザイマシタ殊ニ去ル9日(注ー昭和18年12月9日天皇陛下予科士官学校に行啓された)大光栄オ共ニシ得タ誼ハ忘ルベクモアリマセン 此度ノ転科国軍ノタメ御同慶ノ至リデアリマス私モ及バズ乍ラ無言ノ教ヲ身ニ戴シ世界一ノ将校生徒タラント期して居ります 祈区隊長武運長久」振武人北沢広(航戦闘)「入校以来色々有難ウゴザイマシタ。モット叱ッテイタダキカッタ.教練ニ体操剣術に将タ又遊泳廠営ニ思出ハ尽キマセン.今ハ昔が恋シクナリマシタ区隊長殿ノ平素ノ御教訓ハ深ク肝銘シテ大イニ奮闘イタシマス」小川正(航整備)「我侭一杯色々御手数を掛け誠に有難う御在居ました改めて御礼申し上げます色々御言したい事もありますが只々感謝の極めであります 只今短期入校の茶目連中の指導生徒を命ぜられ、特に区隊長殿の御苦心の事も偲ばれ今更有難い感じで一杯であります御薫陶を体して大いに頑張ります薩摩隼人の熱血に燃えて只管、殉皇の大道に邁進致します区隊長殿の御武運の長久を御祈り致します靖国神社の区隊会待ってをリます」牧野一虎(歩兵・故人)「努 御健闘を祈ります」髯ノ檜村(檜村滋美・航戦闘・故人)「一剣止身 対君恩 近キ将来区隊長殿ノ空飛ブ姿ヲ仰グコトデセウ要節制御心配オカケシマシタ」深川忠興(航整備)「一月十日嵐中松  欽仰嵐赤松 不撓清々爽 別師似嵐男 如松大奮闘 航空身体検査後ノ区隊長殿ノ御注意『牧内は鈍クナイヨ』ノ励マシヲ肝ニ銘ジテガンバリマス」(牧内節男・歩兵」「征空男子之誘 祈名パイロット」新貝(新貝忠昭・歩兵・消息不明)「我人ともにゆかん 万歳」長 (田中長・航司偵)

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