2005年(平成17年)10月10日号

No.302

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茶説

村上ファンドの阪神球団上場に反対

牧念人 悠々

 阪神電鉄の株を1000億円を投じて株の38パーセントを手にした村上ファンドが打ち出した「球団上場」などの動きは不愉快きわまりない。このところ朝ご飯がまずい。巨人軍会長渡辺恒雄さんがスポニチ(10月6日)で「村上はハゲタカ」「野球協約を読み直せ」「上場を許さない」と大爆発している。全く同感である。株の売買は資本主義の世の中では当然の商取引であるが、商売にも曰く言い難い社会的なルールがある。金儲けしか頭にない人にはこのルールがわからない。甲子園で行われる今季最終戦の阪神対横浜戦では阪神フアンから「魂は買えない」の抗議のプラカードが掲げられた(10月5日)。村上世彰さんにはこのフアンのいう魂が理解できない。彼が提案していると言われる「阪神タイガースの上場」「ファンが所有しやすい形の株の公開」「選手に株式購入権を与える(ストックオプション制)」「シーズンチケットのオークション制」「阪神甲子園球場の命名権販売」(スポニチ10月6日による)はいずれも一見口当たりが良さそうに見える。彼には阪神タイガースの選手、ファン、高校球児の聖地としての甲子園球場、プロ野球の発展などは眼中にないのではないか。産経新聞(10月6日)によれば、大リーグでは現在株式を公開している球団はない。1998年、インディアンスが資金調達のため株式を公開した例があるが、1999年地本の弁護士が買収、1年半で市場から姿を消した。大リーグは30球団で1つの組織との考え方によるもので株式公開によって異分子が入ることを避ける形になっているという。異分子とは言い得て妙である。アメリカンフットボールでも基本的には株式は非公開である。なぜ非公開か村上さんは知るべきである。スポーツの世界は子供たちや人々に夢を与えるところかである。試合をお金で汚したくないのだ。それが社会的な暗黙のルールである。
 阪神電鉄は遅まきながら大和SMBCと連携して防衛に乗り出した。だが、事を荒立てる必要はない。株主としての村上さんと穏やかに話し合ってお引き取り願うべきであろう。えてして資本主義の世の中では「魂」は「お金」に破れている。阪神電鉄にとって最大の味方は阪神ファンと世論である。これをバックに阪神球団の親会社の気骨を見せてほしい。

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