2005年(平成17年)6月1日号

No.289

銀座一丁目新聞

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お耳を拝借(133)

「60の手習い」

芹澤 かずこ

  最近、ギターを習い始めた。きっかけはほんの身近な所から。韓国のユン・ソクホ監督の連続ドラマ『秋の童話』の中で、子供の頃の回想場面に『禁じられた遊び』の曲が使われていて、毎回それを耳にする度に遥か昔に見た映画と、従弟がその曲をよく弾いていて、真似てポロンポロンと爪弾いたことを思い出し、『禁じられた遊び』や『冬ソナ』の曲を弾けたらどんなにいいだろう、と夢みたいなことを考えていた。そんな折、仕事場のスタジオでギター奏者の原壮介さんが教室を開くことになって、怖い物知らず、これ幸いとばかり飛びついてしまった。
 飛びついたのはいいけれど、ピアノと同じで右手と左手が同時にうまく動かない。「いつ何処ででもイメージトレーニングをするように」と、先生が絵に書いてくださった指の記号とローポジションの音階をいくら眺めていても、乏しい感覚ではどうしてもイメージが湧いて来ない。
 そこで、子供の頃にセルロイドの筆箱に輪ゴムを巻きつけて遊んだりしたことを思い出し、6色のゴムを6本の弦に見立てて家での練習用の楽器を工夫してみた。確かに絵だけを見ているよりは手の位置は覚えられるが、音が出ないのが不満になってきた。
 まだこの先どうなるかも分らないのに本物を買うわけにはいかず、どうしょうか迷った挙句、楽器店でいいものを見つけて来た。『ウクレレのようなコンパクトなボデイサイズのナイロン弦ギター『ギタレレ』。値段も手ごろな上に楽器としての完成度も高い』という優れもの。
 これで指の動きも音階も確かめられるが、難点は本物と違ってボデイが小さいのでネックも細く、一番苦手とする左の親指での支えの練習が出来難い。でも当分はこれで我慢して、何時の日か本物を持てるように頑張ろう。「その年で新しいことを始めるなんて偉い!」なんて周囲に煽てられながら・・・。



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