2005年(平成17年)4月20日号

No.285

銀座一丁目新聞

上へ
茶説
追悼録
花ある風景
競馬徒然草
安全地帯
自省抄
北海道物語
お耳を拝借
山と私
GINZA点描
銀座俳句道場
広告ニュース
バックナンバー

山と私

(19)
国分 リン

−白毛門は谷川岳のビューポイント−

 魔物が住む山「谷川岳」の絶景を心ゆくまで見た白毛門、山名の殆どが「---山」「---岳」と呼ばれている中で、白毛門と言う山名はちょっと変わっている。積雪期の山頂付近が白髪頭のように見える事からつけられたようである。薄曇りの中一筋の光が指し周囲の景色が輝いている。この感動・達成感がひたすら山へ登らせる。

 スポニチ登山学校8期生エキスパートコース初回 雪山「谷川岳・白毛門山塊」へ申し込む。去年逝った友と最後に一緒に登った山で、今年は私が背負って登りたかった。

 トンネルを抜けたら空の色が鉛色になり、雪が舞い落ちていた。道路の両側は除雪された雪の塊が山積で今年の雪の多さを知らされた。雪に埋まった土合山の家は、初めてである。

 土合山の家を7時に出発。スポニチ登山学校ならでは3人に1人の講師陣が同行し、いかにこの山行が難しいかが予測できた。登山口から雪のトレースの上を歩き出す。前日プレで途中まで必死で登った道を今度は白毛門(1,720m)の頂を目指す。1,200m余の高度差を攻めるのは、ひたすら急登である。「高曇なので登るのには良い条件ですよ」の先生の声に励まされ、一歩一歩アイゼンが雪を捉えあえぎ登る。しばらく登ると新雪に包まれた緩斜面にウサギの足跡を発見。山に花がないため雪の変化が楽しみの一つである。

 10時松の木沢の頭に到着。やっと樹林帯を抜けた。風もなく前方を眺めると真っ白な三角錐が望め、どうやらそれが白毛門らしい。その手前に大きく張り出した雪庇が何ヶ所もあり要注意点と教えられた。急斜面が眼前に現われ、ジグザグにステップが切ってあり、喘ぎ登る。鎖場のジジ岩ババ岩を慎重によじのぼりとうとう頂に着いた。11時であった。深呼吸をし、まわりを見渡したら、360度
の展望である。朝日岳から笠ヶ岳への縦走路がよく見え、トマの耳
オキの耳の谷川岳は勿論平ヶ岳、至仏山、上州武尊山、赤城山等の
雪の衣を纏った眺望をゆっくり楽しむ事が出来た。これだ、これが山へ駆り立てるのだと密かに心で叫んだ。
 頂上でゆっくり昼食を摂り満足した。ふとあの急斜面をどう降りるか不安になったが、先生方がザイルを張り待ち構え、各自ハーネスをザイルに結び滑落防止をし、皆安心してザクザクと降りることが出来た。ザイル回収後の先生方はあの急斜面を駆け下りてくる。技術の差を思い知らされた。下りは快調である。またおりから太陽が出て青空になり、ダイナミックな一の倉沢や衝立岩の東壁が一望でき、冬山の魅力を実感した。
 登り一筋の雪の白毛門を登れた事は、また新たな山への1ページ
になった。

 翌日ゴンドラで天神平へ。始めて谷川岳の洗礼を受けた。強風で地吹雪になりトレースは一瞬にして消え、夜降った新雪が膝まで積もり、私たちを待ち構えていた。尾形先生が天を仰ぎ、「今日は谷川岳へは登れません」ほっと胸をなでおろす。登山道でラッセルの訓練を受けたが、30分程で息が上がり大変さを思い知らされた。谷川岳のほうは相変わらず雪雲に覆われ強風が吹き荒れ地吹雪にみまわれている。3月下旬のこの時期でさえこの凄さである。初冬や真冬には想像を絶する日本海低気圧が猛威を奮い谷川岳を魔の山と恐れられるのをチョッピリ体験できた。またよく見極めて決断することを学んだ。

このページについてのお問い合わせは次の宛先までお願いします。(そのさい発行日記述をお忘れなく)
www@hb-arts.co.jp