2005年(平成17年)2月1日号

No.277

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茶説

その怒りが国籍の壁を突き破る


牧念人 悠々

  テレビを見るとその怒りがよくわかった。東京都の管理職登用について最高裁が外国籍排除は合憲とした判決(1月26日)に対して原告の在日韓国人、鄭香均さん(54)は『世界中に日本に来るなといいたい。日本にきて働くのは、税金を納めながら意見を言ってはならないロボットになるということです』と怒る。『憐れな国ですね』とまで皮肉る。
 鄭さんは1988年(昭和63年)4月東京都で初の外国人保健師に採用された。5年後に主任となり6年目に管理職試験の受験申し込みをしたところ外国籍を理由に『あなたは受けられない』と拒否された。後進のためにと1996年9月、提訴した。
 彼女に対する差別は今に始まった訳ではない。高校の時の成績は優秀であったが韓国籍のため就職はままならなかった。教師たちが100校以上の看護学校に推薦文を書いてくれたが、何れも『前例がない』ということで断られた。彼女が単身で乗り込み頼み込んだ神奈川県の養護学校だけが入学を認めてくれた。日本人のこの偏狭さはどこからくるのか。島国育ちのせいだろうか。前例主義にこだわり、責任のがれをする日本人の国民性は度し難いものがある。少年期を中国東北部でのびのび過ごした私には外国人に対する差別感はない。スポニチの社長時代在日韓国人の青年を記者として中途採用したことがある。
 鄭さんは地域の保健プランを作りたいとそれなりの構想を持っているという。それならばその能力を最大限にのばすポストを用意するのは都民の為になり、東京都の行政の為になるではないか。『管理職は公権力の行使に加わる。日本の法体系は外国人が公権力を行使する公務員につくことを想定していない』という。外国人課長職の考え出した優れた地域保健プラン作りが『公権力の行使」であっても何処が悪いのか。外国籍の課長と日本人のスタッフらが切磋琢磨してプラン作りをすればよりよいものができる。現場の実情を知れば、彼女に限らず外国籍職員の管理職登用試験拒否のバカさ加減を周りの心有る職員達は知っているであろう。東京都でも79職種のうち59職種で国籍条項を解除しているが、泉徳治裁判官の反対意見がいうように『特別永住者が自己統治の過程に密接に関係する職員以外の職員になることを制限する場合にはその制限に厳密な合理性が要求される。特別永住者である原告に対する本件管理職選考の受験拒否は過度に広範な制限と言わざるを得ず、その合理性を否定せざるを得ない』。同感である。
 日本の国籍法も現在の『血統主義』よりアメリカのように『生地主義』にすればこのような問題は忽ち解決する。やがてそのような時代の流れになるであろう。鄭さんの怒りはむだではない。

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