2005年(平成17年)2月1日号

No.277

銀座一丁目新聞

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花ある風景(191)

並木 徹

黒沼ユリ子メキシコのクラシック音楽を演奏

 黒沼ユリ子さんがヴァイオリン・リサイタルを開いた(1月19日・津田ホール)。ピアノ・ヨゼフ・オレホフスキさん。今回はメキシコの作曲家8人のクラシックの作品ばかりを演奏した。日本でメキシコのクラシック音楽を披露するのは初めてである。音楽の父といわれるバッハ(1685−1750)が生まれる以前の16世紀半ばからメキシコでは西洋の音楽が聴かれ、演奏され、作曲され始めていたという長い伝統がある。
 初めて聞く日本のフアンのために、リカルド・カストロ(1864−1907)の「メロデイ」と「ロマンス」、マヌエル・ポンセ(1882−1948)の「青春」の3曲を演奏する。別に違和感はなかった。心地よく聞いた。
ついでピアノ曲を2曲オレホフスキさんが独奏する。エルネスト・エロルドゥイ(1855−1913)の「セビリアの思い出」は聞き惚れた。私が思い浮かべたのは空高く流れる秋の雲。「悠々とともに遊ばん秋の雲」(悠々)。すると旋律は細く嫋々となる。「夕暮れは雲のはてに物ぞおもふ天つ空なる人を恋ふとて」(古今和歌集第11巻483)。セルビアの恋はこのようなロマンチックのものではないかもしれない。けんか別れをしたのであろうか。まもなく明るい調べに変わって終わる。ハッピーエンドのようである。
 最後のマヌエル・エンリッケス(1926−1994)の組曲はよかった。メキシコの土着のにおいがした。現代音楽に近い。はじめはメキシコの自然を歌い、次ぎな農民の生活をつづり、最後は祭りの踊りを表現したと、私は勝手に想像した。日本流でいえば「乱れ打ち」で終わったと印象を受けた。すばらしかった。黒沼さんのヴァイオリンはますます円熟味を増した。心から拍手を送る。

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