2004年(平成16年)5月20日号

No.252

銀座一丁目新聞

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山と私

(7)
国分 リン

−百名山32座眺望の守屋山−

  山の花を求めて長野を訪れたのは、4月の最終の週末である。
私のスキーの師であり、ここ5年来アルプスを中心に共に登山をし、昨年は念願の穂高縦走をしたFさん夫妻が長野県富士見町に
定年後居を構えている。スポニチ仲間のKさんを誘いお邪魔した。ここを訪れるたびに心が和み、なぜか郷愁を感じホッとする。古民家を移築し、住み易く改造され2階は30畳ほどのワンフロアーと3室の客室があり、南西角のお風呂場からは富士山と甲斐駒
鳳凰三山が眼前に見える。南面は全てガラス窓、八ヶ岳はもちろん先程の山々の眺望である。そこへ大きなハンモックが吊るされ、外観とはまるで違うのに驚かされる。

 折から大寒気団が南下し北海道や日本海側は雪の予報があり、
高い山は荒れ模様とのことで相談の結果、守屋山に決めた。

 南アルプスの最北端の山として位置付ける向きもあるがむしろ伊那山脈のそれとしたしたほうがわかりやすいと信州山岳ガイドに書いてある。この山と諏訪湖の間には、諏訪大社が祀られているが、その大社には本殿がない。なぜかといえば大社の南に聳える守屋山そのものがご神体であり、昔から観天望気や雨乞い祈願の山とし崇うまれてきた。折から、諏訪地方は、諏訪大社の
7年に一度の御柱一色に彩られている。

 朝方冷え込みが厳しく快晴。朝8時、車に便乗し一路杖突峠へ、駐車場には既に車が三台、そのうちバスが一台であった。登山道入口周辺の唐松はやっと芽吹きを迎えたばかりである。30分程登ると座禅草の広場へ到着。盗掘の穴がアチコチにあり折角の自然にバラ線が張られ近くで見られない。残念である。怒りを覚える。小川の傍に見つけた花にシャッターを押した。そこからはひたすら登る。たくさんの霜柱を踏みながら唐松林ののなかを40分ほどで立石コースの分岐へ着き、10時半には守屋山東峰山頂1631mへ着いた。見える、見える!! 八ヶ岳は至近にあり北ア・中ア・南アすべての大展望であり、百名山32座案内の石標と山を一つひとつ見比べてみる。感激のあまりシャッターを押し続けた。

 急いで西峰山頂1650mへ向かう。いったん下りまた20分程で到着。こちらは30畳ほどの草地になっており、バスツアーの先客30人程が昼食をとっていても座る余地がまだまだある。

 いつも頂上ではFさんが担ぎ上げてくれたお饅頭と抹茶のおもてなしがあり、それにだしのよくきいた山菜のてんぷらうどんである。頂上で汁物は大のぜいたく品。ここでも大展望を満喫しながらゆったりとした至福の時がながれる。

 帰りは東峰山頂でまた別のツアー客がたくさん登ってきたので、そうそうに、頂上直下の分かれ道を右に折れ立石コースをジグザグに下り始めた。ここは貸切状態、静かで広葉樹林帯の穴場である。途中黄色の小さな花を付けた木、ダンコウバイがたくさんあり写真を撮った。また足元には一人静の花が咲いている。群れをなして、あちこちに。
 春リンドウ・数種類のすみれをみつけた。やはりあまり人が入らない道で自然そのものがいい。浅間の滝を過ぎ雑木の変化のある道を下り林道に出た。このコースは守屋源一さん一人の手により開通したとガイドブックにあったが、変化に富み山道に本来の風情があり深く感謝したい。
 今度は2月頃雪の守屋山に挑戦したい。

 前日は高遠町の座禅草公園へ連れられ、その帰りに迷い込んだ山里で教えられたイワヤマつつじのピンクに染まった山の姿を忘れられない。

 心より手厚くもてなしてくださった富士見のFさん夫妻に感謝しつつ、また私の忘れられない山の一つに守屋山を刻もう。

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