競馬徒然草(15)
―ダービー展望―
NHKマイルCで、キングカメカメハが強いレースをした。1600メートルを1分32秒5。96年タイキフォーチューンの1分32秒6を、0秒1短縮し、レースレコード。タイキフォーチューンのときは、2着馬との差は僅か4分の3だったが、今度は5馬身差。力の違いを見せつけた。調子がよさそうなことは伝えられていたが、これほどの強さを発揮するとは、想像もできなかった。前走の毎日杯を勝ったあたりから、本来の能力にいちだんと磨きがかかったようだ。ある時期に馬が急成長することがあり、「馬がガラッと変わる」といわれるケースがある。そんなケースの1つともいえそうだ。これでダービーでも最有力視されるだろう。
このNHKマイルCが終了して、ダービー出走の有力馬もほぼ絞られた。例年、皐月賞上位組や青葉賞などのトライアル勝ち馬が主力を形成するが、今年の特徴は、NHKマイルC組が加わるということだろう。そして人気の上位を争うのは、皐月賞1,2着馬ダイワメジャー、コスモバルク、青葉賞1着馬ハイアーゲーム、これにNHKマイルC1着馬キングカメカメハ。
これらの4頭が有力視されるわけだが、その比較検討には難しいものがある。ちなみにダービー1、2着を皐月賞不出走馬が占めたのは、グレード制が導入された84年以降、1度だけ(96年)。今年、皐月賞不出走からダービーを狙うのは、ハイアーゲームとキングカメカメハの2頭。ともに当歳セリ市セレクトセールで購入された高馬。ハイアーゲームは、サンデーサイレンス産駒2番目の高値1億5000万円。キングカメカメハは、サンデーサイレンス産駒以外では3番目の高値7800万円。セリの時点で高い評価を得ていたわけで、さすがにと思わせる。評判の高馬ということからいえば、この2頭がダービーに1,2着してもおかしくないことになる。ただ、キングカメカメハにとっては、距離が1600メートルの
NHKマイルCから、2400メートルに延びる点がどうか。このケースは過去にもある。01年のクロフネと、02年のタニノギムレット。クロフネの場合は、NHKマイルCに勝ったが、ダービーは5着に泣いた。タニノギムレットのほうは、NHKマイルCは3着だったが、大舞台のダービーのほうは優勝した。もしキングカメカメハがダービーにも勝てば、史上2頭目の記録となる。
ほかにダービーで有力視されるのは、皐月賞組のダイワメジャー(1着)とコスモバルク(2着)だが、ダイワメジャーは1勝馬ながら皐月賞を制した異色の馬。コスモバルクのほうは、北海道の地方競馬所属で、ダービー挑戦そのものが初記録。しかも、値段は400万円の安馬だったという。話題の豊富なダービーである。
一方、ダービーの1週間前に行なわれるオークスのほうは、恐らく1番人気のダンスインザムードが勝ち、18年ぶりの関東牝馬2冠を達成するだろう。そうなると、久しく不振を続けていた関東牝馬の快挙。86年のメジロラモーヌ以来の記録となる。
青葉の季節。競馬の世界では、新しい歴史が刻まれる季節である。 (
新倉 弘人) |