2004年(平成16年)2月1日号

No.241

銀座一丁目新聞

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茶説

同盟は善悪是非を超えるものなり

牧念人 悠々

 自衛隊のイラク派遣について国論は二分している。どちらかと言うと反対が数の上では多い。日米同盟はよいが、「イラクへ派兵は反対」とわけのわからない事をいうものもいる。月刊「文芸春秋」2月号を見ていたら元韓国連合参謀会議議長・元陸軍大将、白善Yさんが同盟の解釈を明快に答えている。
「同盟というものは善悪是非を問わず守らなくてはならないものだということです。いったん同盟を結んだ以上は、よいときも悪いときも一緒にやらざるをえないというのが基本なのです」。同盟の「盟」には「神に告げて犠牲を殺しその血をすすり約束を固める」意味がある。神に誓うのだから簡単には反故にできない。俗な言い方をすれば、悪友の事を考えればにわりやすい。
日米安全保障条約は1951年吉田茂首相が講和条約を調印したその日にすべての責任を自分ひとりで負う形でサインした。それはソ連の脅威と朝鮮半島の安全保障を考え、米軍の基地利用を認め、その代わりに防衛力の節減を図るという決断をしたからである。1960年に事前協議制の改定をして今日にいたっている。吉田首相のえらいところは「主権」とか「独立」といったスローガンに惑わされなかった点である。吉田首相のこのしなやかな思考法は子供のときに読んだ漢籍にあるという。吉田自身も「人間と人間との交渉の事ならば、何でも漢籍に求めれる」といっている(渡辺昭夫の「「吉田茂−状況思考の達人」より)。
対米追随、すべて丸投げと批判される小泉純一郎首相はどうか。1月19日の施政方針演説から見る。「日米関係は日本外交の要であり、国際社会の諸課題に日米両国が協力してリーダーシップを発揮していくことはわが国にとって極めて重要であります。多岐にわたる分野において緊密な連携や対話を続け、日米安保体制の信頼性の向上に努め、強固な日米関係を構築してまいります」これで十分である。
平成16年を迎え、日本は、戦後初めて自衛隊を海外へ派遣する「歴史的な分岐点」に差し掛かった。昭和16年日米戦争を始めてから63年、敗戦から59年、自衛隊創設から50年。この間の時代の歴史から日本人は何を学んだのか。時代は激動する。「過てる平和主義や情緒的世界観に浸りきったまま、空虚な『自衛隊派遣反対論』を繰り返す人々』(雑誌『諸君』2月号・中西輝政の論文より)が時代の流れについて行けず右往左往するのは止むえないのかもしれない。これまで日本人は国家としてなすべき事をなおざりにしてきた。今まさに『日本国の理念、国家としての意志が問われている。日本国民の精神が試されている』(昨年12月9日小泉首相の発言)といえる。

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