1999年(平成11年)3月20日

No.69

銀座一丁目新聞

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ゴン太の日記帳 (33)

目黒 ゴン太

 家と人でひしめき合う東京から比べると、今いるFranz JosephなるNew Zealandの小さな田舎町は、本当にド田舎という言葉で言い表せる。自分の住む世田谷区の人口と同じくらいの総人口であるNew Zealand の中でも、ことさら小さいここは、人口は、なんと180人。周りには、大きな山々、そして、そこから流れる河の中に、あまりにも不自然に街が存在している。

 Franz Joseph は、豊富な自然を利用した観光で成り立っている。特に、近くの山にある珍しい大きな氷河が有名で、それを一目見ようとピーク時には、一日2000人もの人々が訪れるらしく、街も観光客用のホテルや安宿が、大半を占めている。

 そして、自分達も、今回、多くの人々と同じ様に、その氷河の為に、わざわざバスを乗り継ぎやってきたのだ。氷河は、見るのみだけでなく、その上に登ることができるらしく、“せっかく来たのだから”と観光客根性丸だしで、早速、そのツアーに参加することにした。

 氷河は、世界遺産にも指定されているらしく、その価値を裏付けるように、雄大で、こちらが圧倒される程の自然の中にある。全長12Km もある氷の上を1日中歩く気力も体力も備えもない自分達が入ったツアーは、子供や老人もできる半日ツアーで、7〜8人に1人の割合で、ガイドが付く、あまりハードでない体験ツアーであった。しかし、ハードでないと言っても、相手はムキ出しの自然の中にそびえ立つ氷の塊である為、経験豊富なガイド抜きには、氷の上に立つことさえできないと言える。その為、参加者全員、ガイドの発する言葉を一言も聞きもらすまいと熱心に耳を傾け、又、いざ、氷を歩く際には、皆、細心の注意を払ったのだった。

 しかし、ガイドの人が出す注意事項は、確かに、氷河の歩行方法等の注意も多いのだが、それと同じくらい多く、くぎをさされることがあった。それは、ゴミに関するものである。ガイドは、道案内をすると共に、前を行った観光客の落とした小さなガムの紙一つも見逃すことなく拾ってゆくのだ。そして、口がすっぱくなる程、自分達に、物を捨ててゆくなと言い続けながら、先頭をゆくのである。そのかいあってか、この氷河の上には、他の観光名所にありがちな、人の気配を感じさせるタバコの吸い殻やコーラの缶等の物が、全く落ちていないのだ。nikinso.gif (6317 バイト)そして、氷河ツアーから街へ帰って、意識して見回してみると、町全体がとてもきれいにされている。ゴミ箱の数も街の大きさからすると、かなり多いし、観光客にも街全体のクリーンな街作りの精神が、浸透してか、キチンとゴミを持ち帰ったり、吸い殻入れの前まで行って、タバコを吸ったりと意識的に行動を取っているように見える。

 たった180人の住民であるにも関らず、2000人程の人々に対して、景観を守る為、又、誇りとも言える氷河を汚さない為、休むことなく、自然をできるだけ元のままに残せるように訴え続け、又、実行している様は、見習うべき所がある。そして、その住民に支えられている氷河とその一帯は、世にも美しい姿を、未だにとどめることができているのだと思った。

 

 

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