1999年(平成11年)3月20日

No.69

銀座一丁目新聞

ホーム
茶説
映画紹介
個人美術館の旅
街角ウォッチング
ニューヨーク便り
ゴン太の日記帳
海上の森
告知板
バックナンバー

映画紹介

ガールズナイト 
otake.jpg (8731 バイト)大竹 洋子

監 督 ニック・ハラン
脚 本 ケイ・メラー
撮 影 デヴィッド・オッド
美 術 タフ・バトリー
音 楽 エド・シェアマー
出 演

ブレンダ・ブレッシン、ジュリー・ウォルターズ、
クリス・クリストファーソン、
ジョージ・コスティガンほか

1997年/イギリス映画/ビスタサイズ/ドルビー/103

 この頃とても好調なイギリス映画であり、前回につづいて女性の友情の物語である。40歳代半ばの二人の女性、地方の小さな町に住み、ロンドンにも行ったことがないというジャッキーとドーンが、ビンゴゲームで得た大金を手に、念願のラスベガスに乗りこむのだが――。

 5歳のときに知り合った二人は、40年もずっと親友同士で、義理の姉妹関係にもある。ジャッキーの弟がドーンの夫だからだ。親子4人の幸せな家庭生活を送るドーンに対して、ジャッキーは夫に満足できず、子どももいない毎日に苛立っている。しかし全てに対照的なこの二人は非常に仲が良く、なんでも分けあい助けあって生きてきた。ドーンがビンゴゲームで得た10万ポンドという大金も、以前にジャッキーがあてた200ポンドも、公平に山分する仲なのである。

 退屈な地方の町で生活する女性たちにとって、唯一の娯楽は毎週金曜日の夜に公営ギャンブル場で行われる、女性専用のビンゴ大会“ガールズナイト”で、これが映画の題名になっている。昼間は家計を助けるためにハイテク機械の組立工場で働く二人も、同じ工場の仲間たちも勢揃いである。そしてある夜、ドーンが10万ポンドを引きあてた。だが、ドーンは不治の病、脳腫瘍におかされていた。

 親友ドーンの一大事を知ったジャッキーはドーンの手を引っ張って、ドーンが昔から憧れていたラスベガスへと向かう。あっという間に二人は飛行機に乗り、ギンギラギンのラスベガスに到着した。通りではプレスリーに瓜二つの若者とすれ違ったりもする。この辺りのテンポのよさは快適である。

 放射線治療で髪がぬけてしまっているドーンは、ふさふさの金髪のカツラをつけ、ジャッキー共々ウエスタンスタイルの衣服に身をつつんで、次から次へとゲームに挑戦する。スロットマシーンからはコインがこぼれ落ち、ルーレットも大勝、おまけにカッコいい本物の中年カウボーイ、コディとも友だちになった。

 しかし夢のような日々はそうは続かなかった。ドーンの体が限界にきていたのである。怒らないでね、と謝りながらドーンは家に帰りたいといい、二人はまた、あっという間にイギリスに戻った。そしてドーンは程なく死んだ。

 この場面はとても印象的である。自宅にいたジャッキーは、ふと胸さわぎを覚えてドーンの許へ急ぐ。病室ではドーンが静かに眠り、ベッドのまわりで夫と子どもたちがテレビを見ている。しかしドーンはすでに息を引き取っていて、ジャッキーだけがそれを知っていた。

 子どもの頃から行動力のあったジャッキーは、いつも自分がドーンを支えてきたと思っていた。だが、実はドーンこそ自分を支えてくれていたのだということに初めて気づく。ドーンを失ったジャッキーが、「自分の人生から逃げないで」という亡きドーンの声に励まされて、カウボーイのコディを訪ねるシーンで映画は終わる。ここは正直のところ、私にはよく解らなかった。

 他にもガンの告知の問題、延命措置の問題など、大切なテーマがいくつか提示される。しかし中心になるのは、やはり女性の友情であろう。そうすると、男性監督が女性の友情を扱った名作、「ジュリア」や「テルマ&ルイーズ」と比較してみたくなるけれど、でもコンパクトな物語の中に、イギリスの平凡な庶民の暮しの、あたたかさや心地よさが沢山つまっていることは確かである。

 「秘密と嘘」でカンヌ映画祭の最優秀女優賞や、ゴールデングローブ賞に輝いたブレンド・ブレッシンがドーンを、ジャッキー役を、同じイギリスの女優で、「リタと大学教授」で数々の賞を独占したジュリー・ウォルターズが演じて、共に見事である。監督は1959年生まれのニック・ハラン。

シネスイッチ銀座(03-3561-0707)で上映中



このページについてのお問い合わせは次の宛先までお願いします。
www@hb-arts.co.jp