2003年(平成15年)12月10日号

No.236

銀座一丁目新聞

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茶説

いまやらなくていつやるのだ

牧念人 悠々

 関東大学ラグビー対抗戦グループで全勝優勝した早稲田の二宮監督はインタービューに答えて、なくなった奥克彦大使の次ような言葉を選手たちに言い聞かせてきたという。「いまやらなければ、いつやるんだ。今に精いっぱい死力をつくせ」
今の日本人はこの気概にもっとも欠ける。日本には責任逃れの便利な言葉がいっぱいある。「時期尚早」「先おくり」「前向きに検討する」など・・・
 金融改革一つ取ってみても、ソフトランデングと称して不良債権の処理を「先送り」してきた。ここへ来てやっと荒療治らしきことを始めた。遅すぎる。さきに倒産した山一証券の簿外帳簿の不良債権の処理を遅らせたことが傷口を広げ、取り返しのつかないことになった。
 政治の世界でも企業でも新しい提案が出されると決まって反対論者が口にする言葉は「時期尚早」である。この言葉の裏には日頃から何も考えず、万一の時の責任回避も秘められている。この言葉を良く口にする男は大体、決まっている。無為無策の者の逃げ口上である。
 戦後58年、平和に慣れし親しみ、平和は他人が守ってくれると思いこんでいる。また一人の戦死者も出していない國である。「死力を尽くす」という言葉は死語に近い。自衛隊のイラク派遣についても奥大使、井上一等参事官の死を前に,冷静さを欠いている。二年前の9.11ではニューヨークでは日本人が10数名テロの犠牲になっている。その時の怒りは今どこへ行ったのか。忘れたのか。この時以来テロとの闘いという新しい型の戦争が始まっている。世界の自由主義諸国がすべてテロの脅威にさらされている。日本とて例外ではない。考えて見れば奥さんのように「今やらなければ・・・」と言い切れる人は理想を持ち、前向きに生き、創造力旺盛だからであろう。誰でもができるというわけではない。この気概はなんと言ってもほしい。
 同盟国、日本として、窮地に陥っているアメリカに協力するのは当たり前である。いまやらなければいつやるのだ。

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