2003年(平成15年)11月20日号

No.234

銀座一丁目新聞

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茶説

自衛隊のイラク派遣に思う

牧念人 悠々

 政治はつくづく難しいと思う。万人に納得される政治決定はない。時には恨みを買ってもやらねばならいこともある。自衛隊のイラク派遣を決定した政府はいま派遣の時期について悩んでいる。当然である。米兵は毎日のようにテロの犠牲になっている。自衛隊が派遣予定地近くでイタリア軍がテロで27人の戦死者を出した。当たり前だが、イラク特措法は派遣部隊の安全確保の配慮を義務付けている。新聞は『派遣を考え直せ』と訴えている。
 本紙はさきにこの欄で自衛隊の派遣を早急にせよと主張した。この気持ちは今でも変らない。国際協調と対米協力を重視するからである。とりわけ米軍がイラクで150人以上の戦死者を出しながら、治安維持と戦後復興のために苦闘しているのをお金を出したからといって見捨てていいのか。対米協力を「対米追従」といい「アメリカの属国だ」というものには批判させておけばよい。戦後58年日米は紆余曲折があったにしても固い絆で結ばれてきた。イラクではいまなお2000万人の国民が「フセイン崩壊を喜び、米英の統治を歓迎」(世論調査では7割)しつつ生活している。人道支援を待ち焦がれている。医薬品、給水、橋、道路の補修、病院の整備などの援助を求めている。国連の現地事務所、赤十字のスッタフが引き揚げたように、イラクはいまだ戦闘地域であり、国、人道的施設を問わずテロの攻撃の対象となる。自衛隊も襲われる可能性は十分ある。だから民間の団体ではなく訓練を受けた自衛隊が派遣されるのである。国際テロ組織アルカイダはサウジアラビアの週刊誌に「自衛隊派遣なら東京を攻撃」と脅すに至った。駐イラクのイタリア軍の攻撃もアルカイダであった。アルカイダとの戦いは二年前の9・11からすでに始まっている。自由諸国の一員として日本はその攻撃の対象になっている。いまさら恐れる必要はない。テロに備えればよい。
 親しい友人が困っている。しかも死者まで出している。それを見捨てておくつもりなのか。『判断に迷ったら道徳的判断を優先せよ』といわれる。政治もまた同じである。理屈では解決つかない。またどちらにも結論を導き出せる。理外の理ということがある。それを決断できるものが優れたリーダーである。それを総選挙で勝利した小泉首相に期待する。

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