2003年(平成15年)10月10日号

No.230

銀座一丁目新聞

上へ
茶説
追悼録
花ある風景
競馬徒然草
安全地帯
静かなる日々
お耳を拝借
GINZA点描
銀座俳句道場
告知板
バックナンバー

安全地帯(58)

戸外では物を食べてはなりませぬ

信濃太郎

 会津藩の幼年者教育に「什(じゅう)の掟」があるのを知った。藩校日新館に入学する前の6才から9才までの子供を10人一組として自然の遊びの中から社会人としての基本を教えた。いまでも立派に通用する。

 1、年長者の言うことに背いてはなりませぬ
 2、年長者にはお辞儀をしなければなりませぬ
 3、虚言(うそ)を言うことはなりませぬ
 4、卑怯な振る舞をしてはなりませぬ
 5、弱い者をいじめてはなりませぬ
 6、戸外で物を食べてはなりませぬ
 7、戸外で婦人(おんな)と言葉を交えてはなりませぬ
  ならぬことはならぬものです。

 現在子供から大人まで歩きながら、また電車の中で物を食べたり、飲んだりしている。それが当たり前のようになっている。まえからはしたないと思っていた。電車の中で化粧するのは論外である。
 「戸外で物を食べてはなりませぬ」は誰からも教えられなかった。それでも身に付いているのは子供の時、母親からしつけられたのだと思う。いまの現状は完全に家庭が崩壊してしまっているしるしであろう。家庭が駄目なら幼稚園で「什の掟」を現代風にアレンジして実施してみてはどうか。社会人としての基本は子供のうちに身につけなければ人間として成長しない。
 什とは古代中国の軍隊は10人を一組としたことをいう(広辞苑)。集団で遊ぶうちに我慢する事を覚える。長幼の序を知る。体を傷つけることは悪い事だと悟る。団体の中で過ごすのは自然とさまざなことを子供達に教える。この事が忘れ去られている。「ならぬことはならぬものです」という愚直さが立派である。

このページについてのお問い合わせは次の宛先までお願いします。(そのさい発行日記述をお忘れなく)
www@hb-arts.co.jp