2003年(平成15年)5月20日号

No.216

銀座一丁目新聞

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競馬徒然草(15)

−青葉の季節− 

 桜の季節が過ぎたと思ったら、早くも青葉の季節。
そんなことを考えていると、なぜか、不意にひとつの短歌が蘇えってきた。
九十九里の波の遠鳴り日の光り
青葉の村を一人来にけり   (伊藤左千夫)
都会に住んで海辺の村を知らない人にも、また、山国育ちの人にも、青葉の季節には心癒されるものがあるようだ。週末の休日などには、どこかへ出かけて、のんびりと緑陰の午後でも愉しみたいものだ。
ところで、競馬にも季節感を感じさせるレースがあって、「青葉賞」(5月3日、東京・芝2400メートル)も行なわれた。ダービーのトライアルレースで、3着までの馬にはダービーの出走権が与えられる。勝ったのは関東馬のゼンノロブロイで、2分26秒3の勝ちタイムも優秀。西高東低といわれる中で、関東の伏兵馬が1頭、踊り出たというところだ。
今の季節、競馬の世界はクラシックシーズンのたけなわである。5月26日オークス、その翌週の6月1日にダービーと続く。どちらも殆どの馬が初めて経験する2400メートルの距離。特に牝馬の場合、前走の桜花賞(1600メートル)に比べて800メートルも距離が長くなる。スピードだけでは通用しないので、波乱の気配だ。桜花賞では力を出せなかった馬の中から、距離が延びて真価を発揮する馬が出るだろう。登録馬の中で、これまでに2000メートルの距離を経験した馬は10頭。そのうち特別レースの勝ち馬は6頭いる。2000メートルを走り、さらにそれからの400メートルを踏ん張れる馬はどれだろうか。長距離適性に加えて、騎手の腕がものをいう。探偵気取りの競馬ファンには、緑陰のひとときの話題になるだろう。
オークスは牝馬のクラシックとあって、当日は「レディースデー」。企業とのタイアップによる女性向けイベントもあり、女性主役の祝祭のようなものだ。なお、1週間後のダービーのほうは、「競馬の祭典」がキャッチフレーズ。今年は第70回で、「70回メモリアルレース」となる(創設は1932年で、オークスより6年早い)。それはともかくとして、青葉の季節は祝祭の季節でもある。人並みに祝祭を愉しむのもいいかもしれない。 

(戸明 英一)

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