2003年(平成15年)5月10日号

No.215

銀座一丁目新聞

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茶説

治にいて乱を忘れず

牧念人 悠々

 「治にいて乱を忘れず」という言葉がある。日本では死語に近い。大平の世にあっても乱世となった場合の準備を忘れない。いつでも万一のときの用意を怠らないという意味である。易経の言葉である(広辞苑)。有事立法は万一のために必要である。戦争をするためでもなければ、戦争を準備するためでもない。敵に攻められてきたときに必要なである。自衛隊が戦争の際、自由自在に行動が出来、武器も遠慮なく使えるようにするためである。自衛隊に手かせ足かせをしては敵と十分に戦えない。
 これはけっして戦前に戻ると言うのではなくて、敵から国を守る為である。敵が攻めてきたら逃げるのではなく、国のために戦って欲しい。家族、国民のために働いて欲しいのだ。これは軍国主義ではなく、愛国心という。戦後58年、日本人は平和に馴れ、国を守る気概を失ってしまった。
 日本人の拉致を繰り返してきた北朝鮮をみるがいい。現に核爆弾を二つもっている。濃縮ウラン開発が進めば、核はさらに増える。最先端の生物・化学兵器もある。それをミサイルに搭載して日本に打ち込むこともできる。北朝鮮は早くから「日本を火の海にしてみせる」と豪語している。戦争は誰もが好むものではない。しかし戦争を理不尽にも仕掛けてくる国も存在する。手をこまねいているわけにはいかない。
アメリカは北朝鮮を「テロリスト・リスト」に載せている。今回、核保有が明らかになり、開発も進めているので、ブッシュ政権の矛先は「悪の枢軸」と名指した北朝鮮に向けざるを得ない。9・11の教訓は「脅威には早目に対処せよ」である。核を含めて大量破壊兵器を拡散する恐れのある北朝鮮とはこれまでのように妥協はしないであろう。もちろん外交努力によって平和的な解決を図っていくにしても、いずれ金正日政権を倒すということになる。とすれば、日本は「乱世の準備」を進めねばならない。
有事立法の完備は言うまでもないが、集団自衛権の解釈の問題、アメリカの戦術核使用の取り決めをどうするか。北朝鮮に対する経済締め付け策、韓国、中国、ロシアとの関係など考えておかなければいけないことは少なくない。日本はいよいよ正念場にたたさせられる。

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