2003年(平成15年)5月1日号

No.214

銀座一丁目新聞

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茶説

オウムの松本被告、死刑求刑に思う

牧念人 悠々

 オウム真理教の松本智津夫被告(48)に対して死刑が求刑された(4月25日、東京地裁)。この事件の本質はテロである。検察側の論告でも「わが国犯罪史上、例を見ない凶悪な無差別大量殺戮テロで、宗教性など微塵も認められない」と指摘している。意外にもに日本人にこのテロという認識がない。松本が主謀者として問われた13件の内容は殺人事件7、殺人未遂3、監禁致死1、殺人予備1、武器製造法違反1で、死者は27人に及ぶ。
 むしろ海外の反響が大きかった。4年前中国の二人の空軍将校は「超限戦」の著書を発行、オウムのサリン事件に言及、これからの戦争はテログループ対国家になるであろうと予想した。それが現実となったのは2年前にニューヨークで起きた9・11事件である。オウムは世界に生物化学兵器の恐ろしさを知らしめたのである。公判の中でもオウムは散布に失敗したが、数回にわたり横浜で炭そ菌をライトバンからばら撒いている恐るべき事件が明らかにされた。この事実はあまり知られていない。アメリカはいまなおオウム真理教をテログループに指定している。日本は破防法による解散を見送り、調査対象にとどめた。
 宗教に甘いのは新聞、テレビも同じである。新聞は当初、オウム真理教の名前を出さず「今話題の新興宗教」として報道した。そのなかで、いち早く週間誌「サンデー毎日」が追及キャンペーンを展開しただけであった。テレビは真実とウソを、善と悪を同列に扱うのをテレビの客観性と誤解して、いたずらにオウムの弁護に終始した。
 悪に対する判断が出来ず、声の大きいものに弱いものに事件を報道する資格がない。オウム真理教を「犯罪史上最も凶悪」にした責任の一端はマスコミにもある。その責任を痛感しているものが殆どいないと言うのも情けない話である。

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