2002年(平成14年)8月20日号

No.189

銀座一丁目新聞

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お耳を拝借(57)

-本物の良さ

芹澤 かずこ

 

 孫たちが好きなビデオに「となりのトトロ」があり、何十回も見ているのでセリフもすっかり覚えているのに、それでも飽きずに見ています。こちらも一緒に見ているわけなのですが、家事をこなしながらが多いので、見落としている場面が多く、その度に新しい発見があるのもまた楽しみでもあります。
 1954年のアメリカ映画にアルフレッド・ヒチコック制作・監督の「裏窓」というサスペンス映画がありました。ジェームズ・スチュアートとモナコの王妃になったグレイスケリーの主演です。ストーリーは、足を骨折しギブスをはめて身動きの取れないジェームズ・スュチュアート扮するカメラマンが、退屈しのぎに向いのアパートを観察している内に、挙動不審な男(レイモンド・バー)に妻殺しの疑惑を持ち始めるというものなのですが、この映画も見るたびに新しい発見がありました。始めはどうしてもスリルのある物語にばかり気を取られたり、また恋人役のグレース・ケリーが、彼の見舞いに訪れる度に着てくるクリスチャン・ディオールの見事なファッションについ目がいってしまいがちでしたが、2回3回と回を重ねるごとに、主だった筋の流れとは全く別のところで繰り広げられている、あちらの窓、こちらの窓の一つ一つの小さなドラマにも目が行き渡り、まるで自分がその窓辺で覗き見しているような臨場感さえ覚えたものです。
 これも以前、こまつ座の「元の木阿弥」(井上ひさし脚本)という大掛かりな舞台を見た時にもそうでした。最初は前の方の席だったので全体が把握出来なくて、やはりストーリーと主役の動きしか目に入らず、だんだん席を後ろにして、最後には二階から見て、初めて主役の動きとは全く別の所で、何でもないような、それでいて細かい動きをしている脇の役者にもやっと目が届きました。
 何回聞いても面白い落語、何度読んでも感動する本、何回見ても飽きない映画、“本物”はやっぱり素晴らしい。



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