2002年(平成14年)5月20日号

No.180

銀座一丁目新聞

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花ある風景(94)

 並木 徹


      アムステルダムの小船にくらす
      子猫の夢は 戦のない国
      レンガの町並み とりがとぶ
      川面がひかり 愛がうかぶ町
      平和のカリヨン たからかに
      町に 村に 世界に

 この歌は詩人で児童文学者のこやま峰子さんが、オランダ・アムステルダムの運河に浮かぶ「ねこの船」をモチーフにして作った。題は「ドリーム」(作曲・湯山昭)という。
 「ねこの船」には現在200匹ほどのねこがボランティアの人々の世話で暮らしている。食事代、不妊手術代はすべて一般の人々の寄付でまかなわれる。
 この5月、絵本「ねこの船」が文・こやま峰子、絵・渡辺あきお、英訳・スネル博子で出版された(自由国民社・定価1600円+税)。
 アムステルダムの橋で出会った二匹のねこと少女一家をめぐる愛の物語である。ここにはこやまさんの第二次大戦の体験もこめられている。日本本土への空襲がはげしくなって、疎開をよぎなくされた。このため、家族の一員として暮らしていたねことのつらい別れがあったという。
 絵本は渡辺さんの詩情豊かで、柔らかいタッチの絵で埋まり、絵を見ているだけでも心が和む。こやまさんの「音」の表現がたくみである。たとえば、固いドイツ兵の足音で戦争が近いのを悟らせる。さらに、教会のカリヨンの温かなひびきにねこたちがしばしの幸せを味わっているのを感じさせる。
 灯火管制で夜空の星がきれいに見えるなどということは、今の子供には想像もつかないであろう。「いつもなにかを思いつめている哲学者のような面差しのねこにこころひらかれます」というこやまさんは本当にねこが大好き人間である。だからこそ「ドリーム」の歌もうまれたのだと思う。平和を願う気持ちもよく出ている。
みなさんも「ねこの船」を訪れてみませんか。

 問い合わせはTEL 03−3498−2926
 URL http//:www.east1.co.jp/~trywell

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