2002年(平成14年)5月10日号

No.179

銀座一丁目新聞

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茶説

リーダーはビジョンを示せ

牧念人 悠々

 経済評論家、飯塚昭男さんは、今最も今日的なリーダーとして、日産自動車のカルロス・ゴーンさんと伊藤忠商事の丹羽宇一郎さんの二人をあげる。その改革の手法は似かよっているとして 次の4点をあげる。
 1、未来への確信をもって、ビジョンを示すこと
 2、決断力に優れていること
 3、中長期にわたって具体的な目標と方策を示すこと
 4、アカウンタビリティー(説明責任)を十分に発揮し、社員のやる気を起こさせること
 (飯塚昭男著「リーダーの研究 part2」より)
 文字にすれば、一見易しそうに見える。いざ、実行するとなると、きわめて難しい。たとえば、確信を持って未来へのビジョンを示すには世の中の流れを的確につかまなければいけないし、それなりの勉強と修行を必要とする。そうでなければ、ビジョンを明示できない。社長の打ち出したビジョンにしたがって、改革や諸政策が具体化される。
50年余新聞の世界で生きて来たので、新聞についてなら語ることが出来る。
 1、21世紀の新聞は国内だけでなく世界に向けても、提言、提案する機能を持つ。
 2、常に読者に共感を与え、不満を代弁する記事を掲載する。
 3、現場主義に徹底する。
 4、活躍する女性を登場させる。
 5、社員にやる気をおこさせる。
 スポニチの社長時代(昭和64年1月)に「スポーツ・レジャー総合紙」から「スポーツ・レジャー総合大衆紙」にすると宣言した。この気持ちは今でも変わらない。前記の5つのキーワードをもとに具体的に紙面づくりに着手すれば、必ず部数増につながる。
 たとえば、一面はその日起きた一番、庶民、大衆を感動させたり、興奮させたりしたものを掲載する。それをたえず、スポーツと関連づけて紙面化する。
 裏一面はともかく、表一面は話題を呼ぶもの、時には物議をかもすものでもよい。この閉塞感の強い時代に大衆がその記事で満足できれば言うことはない。確かに、若者の新聞離れがおきているが、それは新聞報道がいまの時代から一歩遅れ、面白くないことも原因の一つになっている。新聞はたえず、改革しなくては部数増は望めない。
 二人の社長がよく現場の声を聞いているのに感心する。丹羽さんの「車座集会」のアイデアはいい。「現場に真実の声が隠されている」と言ったのは弁護士の中坊公平さんである。昭和30年6月に起きた森永砒素ミルク中毒事件を担当して被害者の母親たちと接するうち、母親たちの本当の気持ちは森永という会社を恨むより「何故、嫌がる赤ん坊たちに無理してミルクを飲ませたか」という後悔であった。抵抗力のない赤ん坊を守る者は母親しかいないのである。そこから建設的な弁護活動がはじまった。今の新聞はこの原点をなおざりにしているような気がする。
 経済界には「片手に論語、片手にソロバン」という渋沢栄一の遺訓があるという。とすれば、新聞界にも「片手に論語、片手に真実(現場主義)」と言う言葉があってもいい。

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