2004年(平成16年)11月20日号

No.270

銀座一丁目新聞

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安全地帯(92)

信濃 太郎

ブッシュは戦時下の大統領である
 

  大統領選挙で再選されたブッシュ大統領はマスコミから評判が悪い。「力ずくの流儀に歯止めを」とか「「米国は何処へ行こうとしているのか」という論説が目立つ。大統領選挙の結果は獲得選挙人数ブッシュ286、ケリー252、史上最高の5960万票を得票しその得票差は350万票である。アメリカの国民はブッシュを支持した。アメリカ国民は悪い選択をしたのか。私はそう思わない。それなりの理由があると思う。アメリカは2001年9月11日以来テロと戦争状態にある。アメリカの本土で3000人近い人がテロで殺され、新しい型の戦争に突入している。いまなおアメリカは「戦時下」な のである。多くのマスコミはこの事実を忘れている。ブッシュ自身は「あの悲劇の日、私は決めた。今後、アメリカはテロリストの殺掠に生ぬるい措置や、はったりの脅しで応じることはない。つのる危機から目を背け、いい未来を期待するだけの日々は終わったのだ」といっている(「ニューズウーイーク」日本語版11・17号)。9・11で20名を超える日本人の犠牲者を出し、イラクに自衛隊を派遣している日本も準戦時下であるといっていい。現に日本は名指しでテロの対象にされている。日本のマスコミにこの認識がない。
 新聞は再選の理由の一つに共和党の道徳や信仰を強調した点をあげる。大統領の選挙の投票日に11の州で同性婚を禁止する州憲法の修正案が住民投票にかけられた。その結果11州すべてで同性婚が禁止された。この有権者の右傾化を心配する向きがある。どうであろう。筆者も同性婚には反対である。人間はもともと保守派である。時代の流れはゆっくりとじくざくに流れてゆくものである。右傾化したからとあわてる必要もあるまい。
 今回のファルージャ掃討作戦にしても「力ずくの作戦が反米感情をあおり、イラクの再建自体を危うくする危険がある」(11月11日朝日新聞)と指摘するが、むしろ無政府状態のファルージャから武装グループを一掃するのが急務であろう。新聞は悲観的な見方ばかりを伝える。「作戦が難航すれば決定的な不信感につながることは避けられない」(11月9日毎日新聞)という。作戦が難航するのを期待しているように感じられる。アメリカはイラクの治安が回復するまで徹底的に掃討作戦を行うであろう。それがいき長く、ねばり強く戦わねばならないテロとの戦争である。
 日本の外交は「国連主義」「日米基軸」「アジアの一員」がキーワードである。バランスが取れればよいが、世界情勢はそう上手くいくとは限らない。舵とりが極めて難しい。イラク戦争について言えば、サモワでの自衛隊による人道・復興支援が「日米基軸」の最大の政策であろう。もちろんこれは継続すべきである。当面は「日米同盟」が中心で日本外交は動いてゆかざる得まい。

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