2004年(平成16年)5月1日号

No.250

銀座一丁目新聞

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競馬徒然草(13)

―勝ったのは10番人気― 

  ペースが予想に反したものになると、展開も違ってくる。そんなことを感じさせたのは、今年の皐月賞(4月18日、中山、芝2000メートル)だった。10番人気のダイワメジャーが勝って波乱になったのも、ペースと展開によるところが大きい。もちろん名手デムーロ騎手の腕の冴えも特筆ものだが、ペースと展開に恵まれたことも否めない。ペースが速くならなかった原因の1つは、逃げ馬の1頭マイネルマクロス(後藤騎手)が逃げの手を打たず、終始中団のままに終わったことだ。そのため逃げたメイショウボーラーに競りかける馬もなく、ダイワメジャーも楽に2番手につけることができ、レースはたんたんと流れた。先行馬2頭に有利な展開だ。ゴール前でダイワメジャーが先頭に立ったが、もう少しで先行2頭の、あわや「行った行った」の結果になるところだった。直線で追い上げたコスモバルク(五十嵐騎手)が辛うじて2着に食い込んだが、他の追い込みを武器とする馬たちは真価を発揮できずに終わった。ゴール前での激しい攻防が見られず、見応えのある1戦とはいかなかった。
 それにしても、これまでも逃げるレースをし、予め「逃げ宣言」をしてきたマイネルマクロス(後藤騎手)は、なぜ逃げなかったのだろうか。しかも、逃げ・先行馬に有利な1番枠である。それをスタートから逃げの手を打たなかったために、終始中団のままで、見せ場もなく終わった。納得できない思いを抱いたファンも多いだろう。それはともかく、厳しいレースにならなかったことが、ダイワメジャー(デムーロ騎手)には幸いした。数々の記録を作ることにもなった。まず、1勝馬が皐月賞を制したのは54年ぶりである。しかも、芝初勝利がクラシック優勝。関東馬の同一年度桜花賞・皐月賞制覇は18年ぶり。デムーロ騎手は、昨年のネオユニヴァースに続いての連覇。上原博之調教師はGT初制覇。
 皐月賞に勝ったことで、ダイワメジャーはダービーでも人気になるだろう。上原調教師も、デムーロ騎手にダービーでの騎乗を依頼している。ダイワメジャーは気性に難しいところのある馬で、巧く御するにはデムーロ騎手以外にないという判断による。これまでにもパドックで2人引きに加え、助手を乗せる異例の3人態勢で落ち着かせたこともある。今回のパドックでは2人で引き、さらに後ろからスタッフを歩かせた。パシュファイヤー(目の周りがメッシュ状になった穴のあいているブリンカー)も装着。こうして落ち着かせることに苦心しているほどの馬だ。それをデムーロ騎手が巧みに騎乗したわけで、再び騎乗するとなるとダービーでも最有力視される。
 しかし、その後、デムーロ騎手のイギリスダービーとの日程問題があることが分かり、騎乗は微妙と伝えられる。ダービーの行方は、デムーロ騎手が騎乗出来るかどうかにかかっている。果たしてデムーロ騎手が騎乗出来るか、それとも他の騎手に代わることになるのか。波乱の皐月賞がもたらした話題が、ダービーにもつながっている。

( 新倉 弘人)

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