2004年(平成16年)5月1日号

No.250

銀座一丁目新聞

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茶説

貴方なら「公」と「個」どちらを選ぶか


牧念人 悠々

  日本人は実にのんびりした国民である。イラクの人質事件をめぐって「自己責任」論議をしている。仕事にしろボランテア活動しろ危険な地域に出掛けるる以上万一の場合死を覚悟せねばなるまい。イラクでのフリターの取材、劣化ウラン弾の調査、子供相手のボランテア活動など怠け者の私には出来そうにない。この人達を『反日分子』と非難した国会議員がいたがとんでもない話である(4月27日毎日新聞)。危険な地域であえて仕事をするというのだから私は尊敬する。だが、武装グループに誘拐されたとあっては不注意の謗りを免れない。別に非難するつもりはない。彼と彼女にもそれなりの責任はある。
 国にしてもイラクで日本人が武装グループに誘拐された以上、どのような事情があろうとも日本人を救出の義務がある。今回は無事救出に成功した。当然の話で、何も威張る必要は全くない。「国民のみなさま今後は注意して欲しい」といえばすむ話である。
 今度の人質事件で見過ごされている課題がある。人質の命を犠牲にしてまで国の決定した方針なり政策を実行するかという点である。新聞、テレビは家族や国民の感情の赴くままに「自衛隊の撤退」を強く訴えた。「公」より「個」をとったのである。自衛隊のイラク派遣は国論が分かれているが、日米同盟と国際協力のため国は自衛隊の派遣を決め、現にサモワで活動中である。それを人質がとられたかといってその「自衛隊撤退」要求の脅しに屈するわけには行かない。世論調査の結果も脅しに屈するなの声が50lを超えていた。政府が一貫して「人質救出」を最優先して「自衛隊撤退せず」を鮮明にしたのはよかった。明らかに「個」より「公」をとったのである。人質に危害が加えられずにすんだのは不幸中の幸いであった。この事件は今後の大きな指針になりうる。「自己責任」論よりも重大な課題だと私には思えるだが・・・

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