2015年(平成27年)2月1日号

No.634

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茶説

「イスラム国」のテロの恐怖を考える

 牧念人 悠々

 いつも「テロを対岸の火事とみていると足元をすくわれる」と書いてきた。今回の事件でそれがはっきりとした。2001年9・11事件以来、自由諸国対テログループの戦いが始まった。むしろ国家対国家の戦争はほとんどないといっていい。日本は戦後70年間戦争を一度もせずに平和を維持してきただけにテロの脅威を感じてこなかった。今回イスラム過激派組織「イスラム国」によって湯川遥菜さん(42)が殺害されたのに大きな衝撃を覚えたに違いない(1月24日)。これまでに米国人3人、英国人2人が殺害され動画が公開された。その勢力はシリア内戦が続く限り衰えを見せないだろうといわれている。今回、軍事作戦に参加していない日本が狙われるは異例である。だがテロの対象は理由づけによってどのようにも変わりうる。我々と変わった世界観、価値観を持つ「イスラム国」は善悪が全く逆となる。「冷血の所業」と糾弾しても痛痒を感じないであろう。

 湯川さんが捕まったのは昨年8月。武器を持っていたので怪しまれスパイの嫌疑をかけられたという。湯川さんは日本では珍しい「軍事会社」を経営する。これが災いしたのかもしれない。パソコンで調べてみると、2014年1月に民間軍事会社「PMC」を設立。事業内容は国際軍事事業、国内外警護、海上警備、後方支援業務、紛争地での護衛などとしている。米国や英国から軍事物資を輸入して自衛隊に納入する仕事をしている。資本金300万円。顧問に外交官出身者もいる。今回、湯川さんが仕事のために紛争地に出かけたとすれば残念というほかない。

 「民間軍事会社」は、アメリカでは盛んでこれまでイラク、アフガニスタンの戦争で活躍している。仕事は直接戦闘、要人警護や施設、車列などの警備、軍事教育、兵站などの軍事的サービスを行っている。いわば、傭兵組織である。2000年代の対テロ戦争で急成長した。日本では「民間軍事会社」の急成長は望めないと思うのだが「警察」があるのに「警備保障会社」が伸びたように「軍隊(自衛隊)」に対する「民間軍事会社」が意外と伸びる余地があるような気がする。注目すべきかもしれない。自衛隊退職者の受け皿となりうる。格差社会の世の中、行き場を失った若者が「現実逃避」で軍事会社を頼る恐れもある。

 いずれにしても日本はテロを他人事ではなくなった。