花ある風景(549)
並木 徹
関晴子さんのピアノリサイタルを聴く
神戸淡路大震災20周年の日(1月17日)関晴子さんのピアノリサイタルを聞く(東京・世田谷三軒茶屋サロン・テッセラ).題して「彼方と此方」。震災の犠牲者は6434人。観客は70人ほど。鎮魂のリサイタルであった。
「鎮魂のピアノ流るる6434人」悠々
関さんは東日本大震災被災者支援チャリテイーコンサートを自主企画で今なお続けている。初めの曲目はJ.S.バッハ「平均律クラヴィーア曲集I‐22」「前奏曲とフーガ 変ロ短調」。バッハは数多くの礼拝楽曲を残した。22歳の時になった教会堂のオルガン奏者は当時、人々の尊敬を集め、演奏する音楽が教会堂の盛衰を左右したといわれる。その美しい旋律、幻想的な曲想に酔う。彼方「死者の世界」に行かれた人々もその響きに共感されたであろう。
「曲目は奏者の心初演奏」
ブラームス 「3つの間奏曲」作品117。ブラームスはバッハ、ベートベンとともにドイツの3大Bと称されるがバッハよりは148年も後に生まれている。第一楽章・アンダンテ・モデラート(ゆっくり・やや早く)心地よくひびく。スコットランドの子守歌からつくられているという。
シューベルト「即興曲 作品90 第3番変ト長調 第4番変イ長調」31歳の若さでこの世を去ったシューベルトは交響曲10作品をはじめとして名曲を数多く残した。この日、黒のセーターに長めのスカート姿であった関さん、その鍵盤裁きは物静かで流れるようであった。
モーツァルト 二つのロンド 「イ短調 K511」「ニ長調 K485」
J、Sバッハ=ブゾーニ 「シャコンヌ ニ短調」
最後の曲シャコンヌは数多い作品の中でもずば抜けた傑作と言われる。出だしの調べに引き込まれた。深山に身を置いた感覚にとらわれた。
私は「此方」にいる。関さんが「足ふみしつつ、後退しつつも気持ちの上では未知の道に向かって前進」というように、不勉強を嘆かず「今から勉強すればよい」と前向きに考えたい。
「春浅く流れる調べ彼方此方」悠々
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