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ボールにコミショナーの名が刻みこまれていた
牧念人 悠々
長生きすると己の無知を嫌というほど知る。同時に面白い出来事にもあう。プロ野球のボールに加藤良三コミショナーの名前が刻みこまれているのは知らなかった。それだけプロ野球にとって「ボール」は大切なものであったのであろう。それにしては統一球をひそかに「飛ぶ玉」に変更していた”騒動“はおそまつすぎる。米紙が「(筋肉増強剤)ステロイドを使ったベイスボールスキャンダル」と評したのはうまい。真相を究明するため第三者委員会に任すなどとはプロ野球機構の無能をさらけ出すだけである。その必要はさらさらない。事の本質は本年の開幕前に統一球を「飛ぶ球に変更した」事実を選手にもフアンにも明らかにすればよかったのだ。コミショナ−が知っていたか、知らなかったというのは組織上の問題で、それほど大事なことではない。企業でも社長が知らなかったということはしばしばある。知らなかったのは社長の不徳の致すところですべて社長に責任がある。それを加藤コミショナーがいたずらに「私は知らなかった」と強調する。そのことは自分自身の無能を公表するのみである。71歳の中日の高木守道監督は「うちの投手は賠償請求をするよ。満塁ホームランを2本も打たれているから」と冗談を言う。「嘘」が大きな波紋をプロ野球に投げかけたのだ。「銀座展望台」(6月13日)に次のように書いた。
『「飛ばない球を飛ぶようにした」いいじゃないか。野球フアンは喜んでいる。そのことをコミショナーが知らなかった。部下から信用されていないのだな。そのような大事なことを知らせないとは・・・
不祥事ではないがコミショナーにとっては「のけ者にされていた」喜ぶべき事ではない。加藤良三さんよ、なぜのけものにされたか考えてみる必要がある。
商売の秘訣は「正直」。プロ野球が開幕した4月に「今年は飛ぶ玉にしました」といえば済んだこと。こんなことがなぜ言えない。
このようなときに人間の器量が試される。71歳のコミショナーもつらいなあ・・・』
晩節を汚さないためにも早くお辞めになった方がよさそうである。
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