花ある風景(493)
並木 徹
三井物産写真部 写真展「光と影の行方」
中国・東湖の写真3点を「三井物産写真部 写真展」で見る(5月20日・東京四谷「ポートレート・ギャラリー」)。撮影者霜田昭治君。湖面とあずまや、橋、男と女。光と影が織りなす作品。見ていてまことに楽しい。
東湖は中国武漢市にある。湖面の広さは西湖の6倍33平方qある。湖畔の公園の広さは87平方q。行吟閣は戦国時代の憂国の詩人屈原のゆかりの地と知られる。汨羅江で自決した屈原に私は「昭和維新の歌」(作詞・三上卓)を思い出す。「汨羅の淵に波騒ぎ 巫山の雲は乱れ飛ぶ・・・」。よく口ずさんだものだ。
そう言えば、蘇軾は「西湖を西子に比せんと欲すれば 淡粧濃抹 総べて相宜し」と詠じた。(この西湖を西施にたとえて言うとすれば薄化粧も厚化粧もどちらも結構だ)友人の俳人荒木盛雄君(俳号紫微)は「東湖に映る柳の緑の一枝一枝が見事でした」として3句を詠む。
「楊柳の枝糸引きて水面かな」
「一本一本の枝緑さす水面かな」
「緑濃き屋根の水面にかげ落し」
展示された作品は55点。三井物産写真部の部員23名が撮影したもの。いずれも目を奪うものばかりであった。聞けば毎月1回夜、例会を開き、年2回の撮影会を行うという。顧問は前田晃さん。晃さんの父前田真三さんは日本でも指折りの風景写真家。 前田顧問も北海道美瑛の風景写真3点協力出展されていた。この写真部は50年以上の歴史を持つという。
霜田君とは彼の写真展を通じて知り合った。10年ほど前、写真展で彼の写真を見てびっくりした。風景がバランスよく収まって濃淡が良く出ていた。プロ級であると感じた。その時、感想として「出来るだけ人間を入れたら絵葉書にならないよ」と生意気なことを言った。新聞社に長く勤務していたので写真部と同行して写真を撮る機会が多かったのでついそのような発言になったと思う。私はあくまでも人間にこだわりたい。
「楊柳や美女とおわす湖畔かな」悠々
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