2012年(平成24年)7月20日号

No.545

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花ある風景(462)

 

並木 徹

 

 エルムの会と東京スカイツリー
 

 同期生で弁護士の吉田和夫君が主宰する「エルム弁護士事務所」の暑気払いのパーティーに招かれた(7月10日)。場所は「浅草ビューホテル」25階。吉田君が顧問をしている会社10社35人が集まった。最大の御馳走は25階から眺める「東京スカイツリー」。スカイツリーの634メートルの高さとその真下の浅草寺の建物が新旧のバランスよく、彩りも鮮やかな見事な展望であった。

 法律事務所の名前の説明を吉田君に求めると「エルム」の花言葉は『信頼』だという。温厚な吉田君らしい。北大の寮歌にも『雄々しく聳ゆるエルムの梢』とある。北大の入学試験に落ちると「エルム悲し」と電報を打つと聞いたことがある。この夜一緒に招かれたのは同期生の野地二見君、鈴木正次君であった。鈴木君とはこの5月、同期生北俊夫君、別所末一君らと横森精文君の奥さん雅子さんを訪ね『横森式階段』の苦労話を聞いた。その際、御主人の横森式階段が今、目の前にある東京スカイツリーの「非常階段」に使われていることを知った。別所君が「お客の命綱だ」と表現した。まさにその通りである。7月11日朝から展望台の一般受付が始まるというので10日午前7時ごろから長い行列が出来た。一日2万人が展望台に上る。

 横森家を訪れた際、横森夫人が平成19年4月に出された歌集を拝見した。御主人を亡くされた後のつれづれに、うめきのように出てきた思いが歌になったという。その中の『夫婦とは荷を分け合うが常ならむ何故に重たきわが胸の内』の歌が私の心に響いた。日本の超高層ビル「トップ50」のうち44物件に横森階段が使われている。横森君よ、以てって瞑すべしと私は思うのだが後に残された夫人の「重たき胸の内」は察するにはあまりある。

 俳句をよくする野地君の顔を見ていると、浅草寺の境内に久保田万太郎の句碑があるのを思い出した。2年前にわざわざその碑を確認したのに万太郎の有名な句がすぐに出てこない。歳は取りたくないものだ。「竹馬やいろはにほへとちりぢりに」の句碑である。碑文は小泉信三が書いた。時に昭和40年11月7日であった。久保田万太郎、今にあらしめば東京スカイツリーを何と詠むであろうか。

「スカイツリーいろはにほへと群がりぬ」悠々