2012年(平成24年)2月10日号

No.529

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山と私

(83) 国分 リン

― 2先輩から学んだ「蔵王初スキー」 ―  

 蔵王スキー場で迎えた2012年、昨年3月11日の大震災もこの地で遭った。12月31日特別の思いでその時にお世話になった「ロッジ蔵王ドッコ沼」の菅野氏にお礼に伺い、その後の蔵王スキー場の悲惨さを聞いた。「スキー場は閉鎖され、ガソリンや食料は被災地優先でなかなか手に入らず大変だった。蔵王温泉は静まり、まるで冬眠している町だった。被災者同様に東北の人は闘っています。ぜひ蔵王スキーや観光に大勢で来ていただくことが応援です。」蔵王スキーの再訪を約束した。
あの時預けていたスキーを付け、今回一緒の仲間がいる横倉ゲレンデの「アストリアホテル」を目指した。おりから吹雪になり周りは何も見えず、ホワイトアウト状態である。一人なので心細く、とにかく初滑りなので慎重に、慎重に滑り、リフトを乗り継ぎ、樹氷原コースへ到着したとき、大勢のスキーヤーがいて安心した。このロングコースは毎回滑り知っているので、快適に楽しく滑り降り、右手に横倉の壁の標識を見、次の横倉への標識を右に滑り降り、下から壁を仰ぎ見ると、勇敢に壁を滑り降りてくる様子が見え、その勇気と技術に感心する。そこから横倉ゲレンデはすぐ傍で安心し、ここまで滑り降りるとガスはいつの間に晴れ、ホテルの赤い屋根が見え、初滑りを終えた。さっそく源泉かけ流しの温泉に浸かりまったりとゆっくりといい気分だ。
エーデルワイスクラブの仲間77歳と73歳が各二人、62歳と私の一人暮らしの女性6人が、年越しとお正月を10年来、毎年共に過ごした。この仲間が凄いのはスキーの腕前は私を除き、上級コースは勿論、壁も「ちょっと待ってコース」も難なく何度も滑る凄さであった。疲れを知らない恐るべき先輩たちに私はただただ脱帽であった。山も月に2,3回は登り、体力を蓄えている。
昨年は彼女たちのホームページ「花のランドネ」とエーデルの会報113号に掲載された「ドルポ –カグラマ峠への道」を企画し7月5日から30日まで、コースは花一杯であること、命まで賭けない場所でヨーロッパ人に人気でブルーポピーがあるという「ロワー・ドルポ、カグマラ峠」へ女性6人の参加で決めた。「ドルポどうでした?」「花はじゅうたんのようにたくさん咲いていたわ。新品種のブルーポピーにも出会えたわ。でも1,000m登って、1,000m降りるようなコースが続き、皆体重を減らしての旅だったわ。」でも満足気だった。地獄の濁流越えが3本、最後にまた濁流に阻まれ約4,300m地点で峠を断念したこと。同行のY.S氏、スタッフ、村人の評判「なんと環境順応力のある人達なの?普通なら一人ぐらい帰りたいと泣き出す人が出るのに」と会報に書いていた。私の夢も「ブルーポピー」参加したかったが、まだ現役では休暇がままならず残念であった。今年は何処を目指すのか興味は尽きない。

 昨年の12月と1月、トレーニングに「陣馬山」へ陣馬高原下までバスで入り、樹林帯を登った。
12月は前日雨が降り、冷え込んだため道は霜柱で凍りつき、カリカリと音がする。登りが過ぎ、広葉樹林帯の明るい昔の小屋跡に着いた。「見つけた!」テッシュが散らばっているように真っ白い花がたくさん咲いていた。「シモバシラ」の花である。一つずつ形も大きさも違う。嬉しくて30分以上も花を追い掛け回した。これで仲間を連れこの山へ登ったかいがあり、満足した。この時は和田へ1時間程で下り、バスで藤野駅へ出て終わった。

 1月、関東地方は乾燥注意報が連日出ていた。12月は増発便が出ていたが、今回はバスを待っている人も少なく、成人の日で寒さが厳しいからなのか。餅の食べすぎか体が重く、前回より登りがきつい。いつも最初の15分がえらいが、なんとかリズムに乗り、ベンチのある尾根で一本。枯葉を踏み、土埃で靴は真っ白。いつも泥んこ道に悩まされるのに、本当に乾燥しているのだ。清水小屋で名物「けんちん汁」を頼み、ふうふう言いながらのおにぎりは美味しい。さすが風は冷たくダウンを羽織ってもあっという間に冷え、早々に陣馬の湯を目指して下山。先客に埼玉の三郷から女性登山客が4人いた。始発電車に乗り、藤野駅から歩いて陣馬に登り、温泉からまた歩いて藤野駅に戻るという。男性も4人で「歩こう会」らしい。私はまだこの道を歩いたことはない。このことが考えさせられた。

 この年頭の社長の挨拶を記録に留めたい。「私は子供のころ虚弱体質で、親や祖母に心配をかけた。戦争が終わり大学でワンダーフォーゲル部に入ることを許され、山や自然を相手にし、体力が付いたことと、苦しいときの一本、休憩を取ることが、今までの会社経営に欠かせないことと、改めて思う。今年も変化の激しい時代に、ゆっくり物事を考え、あせらず石橋を叩いていきます。」
思いもかけない山がらみの話に感動した。