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山と私
(72)
国分 リン
― 初滑りスキー「ブランシュ高山スキー場」 ―
1月北横岳へ登る時にお世話になったF氏は、スキーの達人だ。72歳になられるが1シーズン60日以上スキーを楽しみ、必ず指導者に付きより高度な技やテクニックを習得し、カナダやスイスへも滑りに行く私の憧れスキーの先生です。そのF氏は「ここ2,3年普及してきた“内足主動”の力が要らない楽な滑りを教えるよ」と。その方法は年齢の高い人にも適したスキー術だという。それに喜んで、夏白馬に一緒に登ったKさんを誘い、2月にまた長野の富士見F氏宅へお邪魔した。
カービングスキーは、カービングターンが容易に行えるように1990年代に開発された、アルペンスキー用の板。カービングとは「削る」「切る」の意。スキー板のトップ(先頭部)とテール(後部)の幅が太く、センター(中央部)は細めに作られているため、スキー板を雪面に対して傾ける(角付けする)ことにより外力によって板がたわみ、エッジが静止時のサイドカーブよりさらに小さい円弧を描いて雪面に食い込むことで実用的なターンが実現される。おおむね、サイドカーブがR20(半径20m)未満のものがカービングスキーと分類される。元祖と言われているのは1992年にオーストリアのスキーメーカー・クナイスル社が発売した「ERGO(エルゴ)」。本来はレーサーのトレーニング用のセカンドスキー的な扱であったが、1998年頃からスラロームタイプのカービングスキーが発売されたことでシェアを拡大。現在では製造されているスキー板の全てがカービングスキーであり、テニスラケットやゴルフクラブのような用具の進化による技術の大幅な変化が起こっている。(Wikiより)
私たち昭和生まれのノーマルスキー板は2m前後の長さで、両足をつけて、カーブする時は、ずらしをして踏み替えをしないと曲がらず中々コツをつかめず、スキー離れも多かった。平成になりこのカービングスキーが現れ、初心者でも容易に回転を楽しむようになった。昭和スタイルから平成カービングスキー滑りに圧倒的に変化をして、スキー人口はまた増え、家族連れも多くなった。
2月5日(土)長野県富士見町からF氏の車でスキーを積み、白樺湖を過ぎ、霧が峰を横に見ながら一路、長野県小県郡長和町大門鷹山の「ブランシュ高山スキー場」13時到着。子供連れの家族が多い。ここはスノーボード禁止で、初心者や初滑りには安全なスキー場である。準備運動をして、いよいよリフトに乗り込む。緊張で胸の動悸が聞こえる。リフトから滑り降り、初滑り開始。「足慣らしに下まで滑りましょう」まずまず転ばずゆっくり自由に滑り下りた。リフトでまた上に、「内足主動のこのスキー術はちょっと違和感を感じるでしょう。楽な姿勢でスキー板の上に立ち回転しようとする内足(谷側)に体重をかけたまま落下してゆきます。自然な回転をうみます。自分で無理にスキーを回そうとするより、そのスキーの回転性能を引き出すことが必要。僕の滑りを見てください」。横滑りから荷重移動をしてきれいな円弧を描く。Kさんが滑る。古い癖が抜けず、自分で曲げようとする。私も足をずらして、自分で曲げようとする。駄目だしがある。谷側に体重移動するのが怖くて難しい。「股関節の移動で内足に荷重を掛けるように」、自分の滑る姿が見えないのが残念だ。F氏の後を同じトレールで滑ると、不思議に楽に滑れた。同じリズムで体重移動ができるからかなと思う。F氏から「リズムとストックの付く位置、体の向きに気をつけて」何度言われても癖が治らず、Kさんと四苦八苦、「股関節が硬いですよ」じれったいが思うように行かない。でも何度も滑っていると少しずつながらきれいな弧をえがき、昨年怖いと思った斜面も平気に滑れた。15時「今日は疲れてきたのでもう終わりにしましょう。」帰りの車窓からは八ヶ岳の全景がきれいにみえた。
2月6日 6時40分真っ赤な日の出を大きな窓越しに見、周りの畑は霜で一面真っ白、冷え込みがきついのが分かった。雪が少ない分冷え込みは厳しいとF氏に教えられた。
9時40分「ブランシュ高山スキー場」到着。早速昨日に続き教えを受ける。「長い距離を滑る時は内足に荷重し外足を滑らせるように。内足はリラックスさせエッジを谷側にはずし自然な落下をたのしみます。これを左右交互に交換することにより、疲れを少なくすることができる。内足主動のこの滑りはカービングスキーの板の性能を最大限に生かせる楽な滑りをうむことができます。私の滑りを真似てください」
Kさんと前後になりながら先生にポイントを指摘してもらう。今日はストックの付く意味の教えを受けた。「ストックを付く位置はこれまでの“外足主動”のスキーの時より体の横に体重を預けるように付きます。それをきっかけに内足に重みをかけ自然なターンに導きます。だからストックは前ではなく腰の横のできるだけ遠くに付く」ゆっくり声を出しながらテストする。何度も試すがなかなか難しい。午後はF氏に自由に滑ってもらうため、私たちも復習のため、何度も滑り降りた。このスキー場の一番高い所には霧が峰が眼下に見渡せる見晴台がある。ここには夏に霧が峰から縦走した思い出がある。懐かしい。ここから上級コースを滑り降りた。
スキーの楽しさは、スピードと落下感と思う。一度この風を切る爽快感を味わうと、
中毒になるのかもしれない。2時に車に戻り、F氏に深く感謝し、今回のスキーは無事に終えた。
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