安全地帯(298)
−信濃 太郎−
星月夜出湯の兵士何思ひし
友人の医師・荒木盛雄さんが夫妻で知人の家族と一緒に出かけた「マレーシァの旅」の記録を送ってくれた(7月24日から29日の6日間)。添えられた俳句と共に要約して紹介する。
星月夜機ゆ乱舞せる灯また燈(クアラルンプール)
成田からクアラルンプール間6500キロメートル。飛行時間5時間。時差1時間。ここの空港は故黒川記章さんの設計、なかなか斬新。ここから国内線に乗り換えてコタキナパルへ。「下の夜景は光の道と波。ちりばめられた光が素晴らしかった」
キナパルの国花盛りの仏桑花
キナパル山背に紅白の仏桑花
キナパル山は標高4095・2メートル。2001年世界自然遺産に登録された花崗岩の山。人口五五〇〇〇〇人。サパ州には32種の民族がおり、パジャウ族は水上生活者。カケ族は首切り族であった。この州の収入は@椰子(石鹸・マーガリン・口紅等の材料、世界の51パーセント)A石油B木材C観光。ハイビカスはマレーシアの国花。ほかにバンプーオーキッドやブーゲンビリアがきれいであった。ポーリン温泉へゆく。「ポーリントはカダサンドスン族の言葉で『竹』のこと。第二次世界大戦中日本軍が掘り当てた露天温泉。多くの老若男女が水着で楽しそうに入っていた」
ブルネイへ行く。ボルネオには3つの国がある。マレーシア、カリマンタン、ブルネイである。出国手続きを済ませてコタキナバル空港から飛行機で35分。「首都バンダル・スリ・ブガワンノブルネイ空港のトイレには紙がないのには驚いた」。ジャメ・アスル・ハッサナル・ポルキア・モスクを見る。現代29代ハッサナル・ポルキア国王の即位25周年に合わせ、8年かけて1994年完成、5百億円以上の建築費は王のポケットマネーで作られたという。国王は現在64歳。イギリスの軍事学校に学び飛行機、ヘリコプターの免許を持ち今も自分で操縦する。
天狗猿探す船上風涼し
天狗猿驟雨去りても影見えず
マングローブの樹林に激しい恋蛍
紅樹林樹上に蛍火数知れず
天狗猿と蛍のツアーに出かける。天狗猿はマングローブの葉を食べ、巣がない。川で泳ぐことができる。クリアス川に十数人のボートに乗り数席続いて繰り出す。両側はマングローブの林。その中に居る天狗猿を見つけるのは困難。所々で姿が見られたが、写真は撮れなかった。夜、ホタル狩りの船に乗る。マングローブの大木の上によく見ないとわからないような、小さい蛍の光が無数に瞬いている。
南溟の波平らかや天の川
荒木君は旅先では場所と時間・日時をしっかりとメモしており、いつも海外旅行をするとその記録を整理する。まことに几帳面である。敬服のほかない。
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