2010年(平成22年)9月10日号

No.479

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山と私

(67) 国分 リン

― 花の名山「白馬三山」に感動 ―

 8月6日 昨年「唐松・五竜岳」を一緒に登ったMさんと今年は花の名山「白馬岳(2932m)・杓子岳(2812m)・白馬鑓ヶ岳2903m」」を計画した。長野から急行バスで40分「白馬駅」に着き、猿倉行のバスに乗り換え12時40分猿倉到着。登山計画書を提出して、白馬尻小屋を目指し、いよいよスタート。途中、鑓温泉からの下山口を確かめ砂利道を少しずつ登ると、勢いよく流れの強い沢音が聞こえたら「白馬尻小屋」(1560m)14時30分到着。前回の時は2軒宿舎があったが、村営小屋は無かった。毎年秋の登山シーズン終りに、雪崩を避けるため全部畳んで、5月連休に、新たに建替えてオープンするそうで、本当に小屋を運営するのは大変なことで感謝した。予約をしていたので、奥の6人部屋に2人だった。ザックを置き、宿の周囲を歩くと、キヌガサソウの群落を見つけ喜んだ。そのまま大雪渓の登り口まで様子を見に出掛けた。雪を渡ってくる風は冷たく、温度差で霧になり、刻一刻と変化し、凄い迫力で眼前に広がり私達を包み込んでいるようだ。若いカップルが「山は登らないがこの大雪渓の景色を観にきました。」大雪渓を下山してくる人は一人だった。時間は既に夕方4時で、静かに日暮れを迎えていた。

 8月7日(晴)4時半起床で朝食を済ませ、白馬尻小屋は出発する人達で大賑わい、15人近い団体さんも居て準備運動をしていた。標高差1400mを登ることになるので、覚悟を決めて6時出発。ケルンが見え、広場でアイゼンを付けて雪の上に踏み出し、歩き出す。早朝なので行列は無く、ゆっくり一歩一歩ペースで歩く。雪の上の落石は音がしないので、毎年のように事故が起きるとケルン広場に立て看板があった。前方に注意を払い、立ち休みで休憩を2度取り、8時20分に大雪渓を登り終え、小雪渓は危険なのでロープが張られ、新たなルートが紅ガラで雪の上に色付けしその上を登る。雪渓が終わり、アイゼンを外して秋道を登る。振り返ると大雪渓を登ってくる行列が見え、この雄大な自然の中の人間は、蟻の行列と同じで小さいなと感じた。ここから両サイドはお花畑になり、友はクルマユリ・チシマキキョウを見つけたと夢中で写している。高山植物に慰められてひたすら登っていくと立派な避難小屋があり、管理の男性が岩に座り、「あと1時間で村営小屋ですよ。」と登山者に声を掛けていた。この掛け声で元気を回復した。9時40分であった。これならここで充分休憩をとっても12時前に白馬山荘に着けると、ゆとりができた。ここからは花畑を楽しみながらゆっくり登ると村営白馬頂上宿舎2730mへ到着した。そこから登ると、明日通る唐松岳と白馬岳への分岐に着き、ガスが晴れ景色が見えたときの素晴しさに歓声を上げた。

 またガスが立ち込め、白馬山荘へ向う稜線は今にも泣きそうになった。北海道以外、唯一の群生地ウルップソウの紫を探していたら、既に花が終わり、とうもろこしの実のようにもう来年の準備をしている様子に、残念だったが、数年前に来たときより個体数が増えていて、きっと紫の絨毯だったと確信し、嬉しくなった。着くまで雨が降らなければの様子に急ぎ、ふと上を見ると白馬山荘が現れ、11時40分到着。予定通りの時間に安心したが、相変らずガスに蔽われ眺望は無い。山荘の受付の隣に天気相談所がある。山の会合で「白馬山荘に着いたら教えて」と名刺を頂いていた山岳気象アドバイザー城所邦夫氏を訪ねた。この十数年来、毎年この時期、白馬のお天気相談所を引き受けて駐在されている。ちょっとお話を伺っただけなのに、横のレストランの飲み物券を頂き恐縮した。2人で二畳一室の個室を予約していて、ザックを置き、レストランへ行きゆっくり休憩をしながらお昼を食べた。白馬尻で一緒だった山形からのご夫妻と話が弾みすっかり仲良しになった。そのうちガスが晴れ、景色が素晴しくなり、頂上を目指す。身が軽いとなんと楽かといつも思う。チシマキキョウが風に揺れたくさん咲いている。剣の雄姿が見えあーつと声を挙げた。白馬に登れたと実感した。白馬山頂2932.2mは混雑していた。ガスが晴れると栂池コースからの登山者がたくさん登って来るのがみえた。赤い上下の姿の良い自然監視員2人、岩の陰からゴミを見つけ拾っていた。何故あんなところへゴミを隠すのか恥ずかしかった。頂上に30分以上のんびりして山荘に戻ると、コマクサの群落地があると教えられ、人が居ない場所へ行ったらそこから大雪渓が見下ろせた。ミネウスユキソウやホトトギスやイブキジャコウソウが咲いていた。星型の黒いミネアケボノソウを見つけたときは嬉しかった。雨粒が落ちてきて、急いで山荘に戻った。

 17時私達の夕食の時間であった。21時まで夕食の時間割があり、混雑が感じられたが、個室でよく休めた。

 8月8日(晴れ)城所先生に挨拶に行くともう既にお天気相談所で仕事をされていた。予報を伺うとパソコンで天気図を見せて、下り坂で遅くなると雨になるかもと教えられ、剣をバックに一緒に記念撮影をした。感謝をして、6時に杓子岳・白馬鑓を目指して出発、始めてのルートで丸山2768mを登り、後ろを振り返ると山荘と白馬岳が目に焼きついた。この頃からガスが立ち込め、杓子の台形状の稜線を歩いている人の姿も見えなくなり、一旦下ってからの杓子のガレ場はまき道を選んだ。景色の見えない道をひたすら登り、白馬鑓2903mへ9時30分到着、ガスの中で立山連峰、剣岳、鹿島槍も、遠く富士山や槍ヶ岳も見えるはずが、何も見えずがっかりした。白馬鑓温泉小屋へ下山開始。ガレ場にコマクサの群落が大きな花を咲かせ、きれいだ。大出原のお花畑はチングルマやクルマユリやハクサンフウロやハクサンコザクラの群落やウサギギクが咲き乱れて、友は歓声を挙げていた。クサリ場に着き、下に居た若い監視員に「アドバイスを」とお願いしたら快く引き受け、「滑る岩だから充分気をつけてストックは背に両手でクサリをしっかり掴んで」安心して無事に3箇所の長いクサリ場を下りた。硫黄の匂いがして日本で2番目の高地にある白馬鑓温泉小屋2100mへ12時到着。ちなみに日本の最高地の温泉は調べたら立山の地獄谷温泉を引いているみくりが池温泉2410mのようだ。早速女性専用に仕切られたお風呂へ飛び込んだ。先客が5人居たが、15人くらいは入れる広さがあり、どんどんお湯が出ていたので気持ちよく入れた。温泉に感謝。どんどん小屋は混んできて、女性8人の一部屋であった。

 8月9日(雨)激しい雨が降っていた。城所先生の予報が的中。雨具を着け5時半出発。雪渓を渡り途中から雪渓を登るときは緊張したが、友は先にどんどん行くので私も付いて下りた。このころから雨が止み、雨具を取り涼しくして歩く。途中女性がリーダーの団体さんが前に居て、中の二人が同じところで滑るのを目撃した。幸い軽い打撲で済んだようで安心したが、一歩間違えば滑落だ。私達も注意しよう。

 8時に中間地点の小日向のコルに着き、ニッコウキスゲが咲き、お化け水芭蕉の葉が茂っていて池塘があった。そこへ山ギャルの一人歩きが来て話をした。いつも一人で歩いていると言う。私が親なら心配だ。この頃良く見かける光景だがどうだろう。いつの間にか私達とは離れ、私たちはどんどん下り、初日確認した猿倉への車道へ着き、9時40分猿倉荘へ無事到着。握手をして今回の白馬三山の山行を終えた。

 友が「この夏の最大イベントを無事終え、たくさんの花達に出会えたことに感謝する。」この一声で緊張が取れ、嬉しさが倍になった。

 山は、自然は微笑んでいる時は本当に素晴しい時をあたえてくれるが、一度ご機嫌を壊し、無謀な計画や自然をあまくみての行動には容赦のない反省をあたえると、最近やっと考えられるようになった。自然をもっともっと大切にしたい。