2010年(平成22年)5月10日号

No.467

銀座一丁目新聞

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安全地帯(283)

信濃 太郎

旅は道づれ 世は情け
 

訪れた戸隠森林植物園は雪にうずもれていた(4月30日)。水芭蕉はまだ雪の中であった。セーター姿でも寒かった。昨年は園内のあちらこちらに見事な水芭蕉の群落を見せ、観光客の目を楽しませていた。水芭蕉の盛りはあと2週間ほど先になるという。すれ違う人々はバードウォッチングのための双眼鏡やカメラを持っていた。資料には「運がよければ40種類以上の鳥たちを観察できる」とあった。みどりが池のそばの「おうやま桜」はまだつぼみのままであった。「天の怒りか まだ雪の中 水芭蕉」悠々
 飯山城址を見物する(5月3日)。上杉謙信が武田に対抗するための前方基地とばかり思っていたが歴史は古く、すでに鎌倉時代に泉小次郎親衛が桜の木の下に泉が湧いているのを見つけて居城を定めたという。謙信が階段式に郭を配した『後堅固の城』で12年間の合戦にも信玄が落とせなかったと案内書に書いてあった。すでに桜が散った木の下で宴を張っている一組の人たちを見かけた。城址公園入り口の無料休憩所でお茶をいただいた際、美味しい昼食を食べさせる場所を尋ねたところ、近くにある本多という由緒ある「うなぎ屋さん」を紹介された。行ってみると昼時にまだ30分もあるというのに10人ほどが行列していた。30分をたって席に案内されたが待つこと10分、やっと、うな重にありつけた。味は「まあまあ」であった。同行の妻と義弟は「うまかった」といっていた。ここは「小京都」といわれるほど寺の多い城下町。市街地だけでも20の寺がある。まずかやぶきの山門が見事という西敬寺に参る。次いでコケの庭と山門のモミジが見事という称念寺に参る。いずれもお賽銭を入れて「家内安全」「商売繁盛」を祈る。
 「菜の花祭り」を開いているというので好奇心旺盛な妻だけが「菜の花公園」へ渡し舟で千曲川を渡ってゆく。渡し銭は500円(往復・大人)この渡し舟は3年前に25年ぶりに複活した。なかなか風情がある。子供たちが救命衣をつけて喜んで乗り込んでいた。このあたり一面、菜の花畑である。今が盛り。きれいである。全長367キロある千曲川のちょうど「おへそ」の部分に飯山があるそうだ。この地域の菜の花は菜種油用ではなく漬物として有名な「野沢菜」である。あたりを散策する。
 「渡し舟 行きつ戻りつ 花畑」悠々
 信濃町を通って帰る。ここは一茶の生誕の地。記念館案内の標識をみる。一茶の誕生日は5月5日。今から247年前の宝暦13年(1763年)に農家の長男として生まれた。「春立や愚の上に又愚に帰かへる」の句がある。あくまでも謙虚である。「人生をてくてく歩く」一茶はさらに詠む。「老いぬれば桜も寒いばかり哉」また詠む。「死支度致せ致せと桜哉」。文化7年(1810年)の作というから200年前の作品である。私の休暇期間中は快晴に恵まれた。
 「死支度不必要と五月晴れ」悠々