2010年(平成22年)3月10日号

No.461

銀座一丁目新聞

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山と私

(62)
国分 リン

――雪の「陣馬山」――

 6年前、亡き親友の渕上さんの追悼山行をスポニチ登山学校の仲間たちとした特別の想いのある陣馬山へ、冬枯れの雪があるときに登りたいと常々考えていた。2月の冬晴れの日、単独行は止め、安心のため片平先生に同行をお願いしたら快く引き受けてくれた。1時間に1本の高尾駅北口から陣馬高原下行きのバスは9時50分発に乗り、「陣馬の夕焼け小焼けのふれあいの里」を過ぎ10時20分に終点陣馬高原下到着。ふれあいの里には童謡「夕焼け小焼け」の作詞家中村雨紅の生家の宮尾神社に歌碑もあり、写真家の前田真三ギャラリーもあるという。今度ここへの下山コースを調べよう。
 シーズンならば大勢の登山客で賑わうであろうが、私たちを含め4パーテイであった。20分程舗装された林道を歩くと山道への分岐があり、杉の木立に覆われた山道をひたすらのぼる。杉の植林帯は変化の無い薄暗い登りが続く。暑くなり汗が滴り落ちた。こんなに汗をかくのは山以外に考えられず、これが健康の秘訣か、頭をよぎりながら歩く。一面に雪が5cmほど残っていた。ザラメ状態で歩きやすく、踏み跡の無いところを歩くのは楽しい。尾根道に出て和田峠との分岐に出た。お日様が樹氷を輝かせている。きれいだ。真っ白な雪の斜面のなかに泥んこ状態の登山道になった。その道を避け、冬ならでは雪の上を歩き葉が落ちた藪の中を、上にジグザグに登る道を採った片平先生に感心しながら、後ろを歩くと陣馬の小屋の屋根が見えた。12時10分陣馬山頂(857m)到着。東京都と神奈川県に境を接し360度の展望で西に富士山を探したが生憎雲の中で残念、頂上にはいろいろなコースから大勢の登山者で賑わっていた。私同様に青空に導かれ山へと足を運んだのだろう。小屋名物の温かいけんちん汁とおでんを手作りお握りと一緒の昼食は最高だった。幼稚園生らしい女の子が家族と登ってきた。周りの登山客に「また山へおいで」の声に「はーい。また来ます」の元気な返事に嬉しくなった。相模湖へ下山開始。どろどろの道を滑って転ばないように慎重に歩き、13時20分奈良子峠から北斜面にくると多くの樹氷が残りこの季節独特の景色にうっとりした。20分程で明王峠到着。ここが下山コースの分岐になり、始めての相模湖への下山路へ向う。40分ほど調子よく歩くと、大平小屋跡の休憩所へ着くが先へ進み、急な下りが続き、眼下に相模湖が見え出したらザー・ザーと騒音が耳に障り、山の雰囲気が台無しと思いながら歩いていると、与瀬神社へ15時に到着。調べたら与瀬は甲州街道一宿の一つで本陣1、旅籠6、問屋場一ヶ所があった宿場町で、芭蕉や素堂も歩いたと書いてあった。与瀬神社絵馬堂は明治19年に建立され、この天井に20数枚の俳画が残されているという。調べてゆっくり拝見に行きたい。お参りをして急な石段を降りた。1943年12月中央高速道の竣工の記念碑があった。騒音の素・中央高速道があり、車の流れを見ながら、その上に架けられた立派な橋の上を歩き、相模湖駅に向う。相模湖への下山は何かを考えさせられた山行になった。