1998年(平成10年)8月20日(旬刊)

No.49

銀座一丁目新聞

 

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スーパーウオッチング(2)

麻根琴美

 時代が変われば、人も変わる。長年マネキンをやってくると、試食の様子にも変化あり。それは男性が以前より試食するようになったこと。20年以上試食販売をしてきて、昔は奥さんや子供さんが試食しても「僕はいいよ」って断る方が割に多かった。勧めても、そう言う男性はかなりいた。

 ところが今、土日や夕方、ショッピングカートを押した子供連れの良き(?)父親達が試食販売の場所に来て、勧める前に「いいですか?」と言い、まず子供たちに配り、そして御自分でも召し上がるというのが、どこでも見られる風景となっている。

 「おいしいでしょう。いかがですか?」と言うと、「家内が来るので家内に勧めて下さい。」と言う父親多し。昔は買い物に付き合う父親は少なかった。いつ頃からこんなに増えたのかと考えれば、思い当たるのはひとつ。昭和47年ごろから、会社での給料を銀行口座振込み制にし、カードで給与を引き出せるようになったのが定着した昭和53年ごろから。

 銀行振り込み以前、給料日には主婦の方との間によくこの会話が交わされた。

 「給料日だからおいしいものを作って、早く帰って来てもらわなくちゃ。給料持ったまま遊びに行かれたら困るのよねぇ。」

 近ごろは、給料日なので御馳走を作るという声はほとんど聞かない。給料日といっても、御主人が持ち帰るのは給料明細書のみ。おこずかいだって、銀行のキャッシュコーナーで下ろしてきた奥様にねだる始末。

 御夫婦で買い物に来ても、御主人の「おい、買えよ」の言葉に奥様は「あなたのおこずかいから買いなさい」とピシャリ。足早に去る妻を追って行ってしまった夫の姿…。子供が欲しいとぐづると、大概の主婦は買って行くが、夫の場合だと我慢させているように見えてならない。購買決定権を夫VS子供で争うなら軍配は子供にあがる。それを決定するのは、主婦。

 父親の権威が無いと嘆く前に、何故、給料の銀行振込み制に団結して、反対しなかったのだろう。まさか、このような事態になるとは思わなかったんだろうが…。

 どのみち、キャッシュカードは奥様に取り上げられる運命ではあったと思うけれど、カードの管理は自分がする。妻には渡さないという気概を持って欲しかった。

 そもそも日本の大衆は本当に大人しい。消費税が3%になる時は、あんなに騒いだのに5%の時にはもう諦らめ切った様子の消費者達。

 結局、山神が怖くて、思うように出来ないということだろうか。

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