2008年(平成20年)7月20日号

No.402

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茶説

家政婦・秋子、外交密約を暴く
 

牧念人 悠々

 市原悦子の「家政婦は見た」(7月12日テレビ朝日系土曜ドラマ)が26作品目で終わった。柴英三郎のシナリオによるこの番組を楽しみにしていたのに残念である。今回、秋子が派遣された先は外務審議官・宮木一政(50)の屋敷。一政(佐野史郎)の父親浩史(77)は各国大使を歴任した。息子の中也(23)もキャリアの外交官僚である。屋敷にはこの3人のほか一政の妻由子(47)と中也の妹で音楽好きの由佳(21)が住んでいる。
この一家にある目的をもって新聞記者,利根奈央が近づく。浩史への取材を由子が断る。由子は父親で代議士の川田克己(74)に善後策を頼む。中也はNGOの「アフリカの子供を救う組織」の松沢茜(45)に誘われて「アフリカン・バー」に行く。コザールは30年も続く独裁大統領モビラ将軍の圧政のもとで国民はロクな教育も医療も受けられずジャングルやスラムで暮らしている。コザールは資源が豊富な国で銅、コバルト、金、ダイヤモンドなどを産出、その権益を大統領とその一族が握っている。日本を含めた外国の援助も国民には届かない。反対勢力は虐殺され弾圧されている。利根記者は散歩途中の浩史を?える。アフリカ4ヶ国の兼任大使であった浩史に25年前のコザール共和国との密約を聞きただす。
当時ある新聞がその外交機密をスクープしたのだが政府は一貫してそれを否定した。浩史は「最近物忘れがひどくて」と逃げる。密約というのは日本がコザール共和国に行った経済援助2億ドルのうち8百万ドルをモビラ大統領が自由に使うことを認めるというものである。資源開発の権益を日本が獲得するためである。沖縄返還の際には密約をめぐる外務省機密漏えい事件があった。米国国務省がその密約文書を公開したあとも政府は否定している。このとき、政府は外務相の女性事務官が新聞記者に機密文書を手渡したのだが、国民の知る権利を“情を通じて”と男女関係のスキャンダルに仕立てて世論の追及を避けた。
ドラマでも中川英男記者と杉村道子事務官はその動機を国のためと主張したが、当時検事であった川田克己代議士に「密通」という言葉でスキャンダル化されてしまった。
古今東西の歴史は時の政府は政治事件にしろ経済事件にしろ、政府が窮地に陥った際、必ず事件をスキャンダルにして有無耶無にするのを常とする。
ドラマで救われるのが中川記者と杉村事務官が結ばれて蕎麦屋をひっそりと営んでいることだ。その息子の健一(26)もギターリストとして由佳とともに街頭ライブをする相思相愛というのも見ていて気持ちがよい。
モビラ政権が崩壊して密約が文書として出てくる。利根記者に浩史元大使は「アフリカでなくなった妻がいうんだよ。生きているうちに人間の義務を果たしなさい」と密約を認める。利根記者の特ダネとなる。それでも政府は「密約はなかった」という。権力というものはこういうものである。最後に秋子は都はるみの「好きになった人」を歌う。視聴者よ。「元気でいてね」といいたかったのか。

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