2008年(平成20年)5月1日号

No.394

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茶説

激流を止めることができるか

牧念人 悠々

  水かさの増した激流が堤防を破って向きを変えた。福田内閣の初の国政選挙である山口2区の衆院補欠選挙結果を見てそのように感じた。堤防を破った川の流れは民主党へと向かったように思える。投票率は前回より(平成17年9月)3・45ポイント低い69.00%。当選した民主党の平岡秀夫さん(54)は平成12年,同15年の衆院選挙は山口2区で当選、前回の17年は比例代表中国ブロックで復活当選している。知名度は相手の自民党候補の山本繁太郎(59)より高いにしても民主党が訴えた「年金」「道路」「医療」の3点セットは、「地域振興」で戦った自民党に痛烈なパンチをくらわした。「堤防」を破った激流を作ったのは「後期高齢者医療制度」の長寿者たちだと思う。庶民は「お金」には敏感に反応する。さらに言えば、暫定税率の問題もさることながら時代の底流にある「ワーキング・プアー」の激増は無視しえない。無党派層も自民党離れをしたとみてよいであろう。民主党候補と自民党候補の票差は21923票。この数字の意味を自民党はかみしめるべきであろう。
「ねじれ国会」での民主党の対応には私は疑問を持った。海上自衛隊によるインド洋上の給油問題反対、再三にわたる日銀総裁の不同意問題には苦々しく思った。政権を担当するかもしれない政権としては大人げないと感じた。だが、「民意」は違った。3月末までに解決するはずの「宙に浮いた年金」がそのまま。ガソリンが安くなったらまた上がる。高齢者の医療は年々増加するのに歯止めをかけなければならないのはわかるが「後期高齢者医療制度」のPR不足、理不尽な年金からの天引きETC・・・あまりにも頭にくることが多すぎた。物事は理論通りには行かない。感情に左右される。今回の山口2区の有権者が下した審判は「福田内閣の中間評価」であるにしても全国300ある小選挙区の一つが示した単なる選択とは思えない。明白に自民党から民主党へ潮の流れが変わったように思える。政治史に残る「補選」であった気がしてならない。政治の一寸先は闇といわれるが今後、よほどのことがない限り今年中に総選挙があれば民主党が勝つであろう。
「選挙の顔になる首相をかつぎ攻め解散を打ったほうが良い」(自民中堅・産経新聞4月28日)の声もある。また道路特定財源を09年度から一般財源化する法案をまとめ国会で成立を図ったとしても今の事態を押しとどめるのは難しい。時代の逆流に逆らって選挙に勝つのは至難の業である。

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